笑って ページ38
確かに自ら記憶を消したのは確かだ。けど私はもうハッキリと全て思い出したはず...確かに両親や幼い頃の記憶はないものの、それは単純に昔のことだから覚えていないだけで全部もう...
『――その眼を見たら、彼はなんて言うのかしらね?』
「眼...?」
顔を上げると、目の前が赤く染まり視界が少しボヤけていた。その後すぐに頬に伝う雫を拭い、泣いていることに気がついた。
ボヤけていた視界も元に戻り、世界はまた同じ色を取り戻しめいる。
『――あなたの心は凍ったまま。誰にも溶かせない氷よ』
「けど、クラピカといる時は温かいの...」
『――悲しい勘違いね。本当に気づいているのでしょう?』
息が上がり、きっと今の私は過呼吸になっているはずだ。
そもそもこの声の主は誰なんだ?なんで私はこの声を知っている?
分からない。分かりたくないんだ。
「...!A!」
「え?」
気がつくと私は誰かに抱きしめられていた。その人の声はさっき聞こえた声よりも優しく温かい声で安心出来る。
「クラ、ピカ...?」
「ずっとベッドに座って蹲っていたから心配になってな。大丈夫か?」
あの声はもう消えていて、この場には私とクラピカしかいない。
やっぱりあれは、私が1人の時にしか現れないんだ。
「うん。大丈夫だよ...心配してくれてありがとう!」
私は恐怖心を隠すよう無理やり笑顔を作ると、彼はとても悲しそうな顔をした。
「な、なんでそんな顔をするの?綺麗な顔が台無しだよ...だから」
いつも通り、笑ってよ。
そう言いかけた時、私はまだ泣いていたことに気がついた。
「あれ、なんで...私...」
「無理に取り繕わなくていい。私の前ではそのままのAでいいんだ」
私の瞳から溢れる涙を指で拭いながら、彼は優しく微笑んだ。その姿は見ていると辛くなるほど美しくて、ずっと見ていたいほど尊かった。
「...それなら、今は一緒にいて」
「もちろんだ。キミを1人にはしない」
控えめに抱きしめると、自分よりも身長差のある彼の体に包み込まれるように抱き返された。
「クラピカ、好き...」
そのまま私は意識を手放してしまったようだ。
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僕です。(プロフ) - はにゃ?さん» ありがとうございます!そう言って貰えて嬉しいです😊応援に応えられるよう更新頑張りますね! (2023年4月15日 15時) (レス) id: 44f4c2417a (このIDを非表示/違反報告)
はにゃ? - とても読みやすいです。これからも応援してます。 (2023年4月15日 2時) (レス) id: 1a9c7abd60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:僕です。 | 作成日時:2023年4月11日 17時