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(約1時間前)
「夕食来たで〜、A」
「はーい……あれ、治は？」
「治は今あっちで仕事しとるから、今日は俺と食べよな。」
「おん、分かった」
進藤くん(治の同期)はそう言って、今日の夕食が乗ったアルミのおぼんを私に手渡すと、自分はコンビニの袋からおにぎりやら唐揚げやらを取り出した。すごくいい匂いがして美味しそうだが、前に同じようなものを食べていた治にそれを強請った際、刺激が強いから食べてはいけないと言われた。
・
「？どしたん、早よ食べよや」
「あ……おん、いただきます」
進藤くんの夕食に目を取られつつ、手渡されたおぼんの蓋をゆっくりと開けた。
・
「………え？」
白いごはん、味噌汁、彩豊かな野菜サラダ…ここに来て初めて食べた見慣れない食べ物達の中に、今日は見慣れすぎているものが並んでいた。その姿こそ変わり果ててはいるものの、真ん中の1番大きな皿に乗せられたそれに私は静かに息を呑んだ。
なぜ死んだ魚が自分が今日食べるべきものの中に並んでいるのか。ただ、これが本当に「食卓として」並んでいるというその意味を、私はやがて理解する。
人間にとって海に棲む生物は「食」の対象であるという事を
…
だがその事実はそれ程、今の私にとって重要な事ではなかった。海に居た時なら食べようなんて考えもしなかった魚。なのに今、それがこんなにも自分の食欲をそそっているのは確かであるのだから。
速まる鼓動を抑えつつ、一口食べた。
「…………………美味しい」
ほぼ予感していた通り、それはとんでもなく美味しかった。
甘辛いとろみが薄味で柔らかい魚の身と絡んで、舌と歯をピリッと刺激する。今しがた箸で身をほじくったところから細い骨がちらついていたが、その骨の裏にも身がぎっしりと詰まっていて余計にそれが食欲をそそった。
こうしてはいられない。早く、もう一口……
・
・
「……………うっ……」
「え……A……？！」
頭と逆の行動を取りはじめた自分の体に私は酷く動揺した。体がとても素直に反応した分、その反動でどんどん良くない事を考え始める。
いや、もしかしたら私はそういう考えを反射的に避けようとしていたのかもしれない。
・
私もいつか殺されるなんて、そんな事…
・
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兎海(プロフ) - しらたまさん» わあ、嬉しいです…！ありがとうございます！ (2020年10月16日 0時) (
レス) id: 7a66186871 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま - え、すごい好きですこの作品！！神ですか？神なんすか！？ (2020年10月15日 21時) (レス) id: 11f81e1c6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：兎海 | 作成日時：2020年9月23日 20時
