1 ページ2
・
人魚が目を覚ましたと聞いて、夜中の3時に叩き起された。徹夜明けで深い眠りについていたという事もあり、かなりイライラしていた。
「なんで俺なん……お前行けや」
微睡んだ目を擦りながら、起こしに来た助手に嫌味たらしくそう言うと「室長が、どうしても治さんにと…」と靉靆たる表情を浮かべつつ、そう返してきた。
・
元々大学で哲学を勉強していた俺が、この研究所の極秘研究科哲学室に雇われてから、もうすぐ２年が経とうとしていた。
医学、自然科学、そして哲学に長けた輩で構成されるこの研究所には、化学上証明できないありとあらゆる生き物や自然現象などの情報が極秘で送られてくる。それに対し、研究や実験を行う事が主な仕事だ。
給料も良いし、化学でまだ証明された事がない前提のない物事ばかりを研究対象にしているので、哲学者としてのやり甲斐は十分にある。
およそ3週間前、この所内に送られてきた生きた人魚の姿を見に行ったばかりだったが、生とはかけ離れた姿のその惨たらしさといったらなかった。
尾鰭は損傷が烈しく、所々にある引っ掻き傷のようなものが爛れたりしていて、胴体は人間のそれに限りなく酷似していたが、皮膚が全体的に青白く、まるで蝋人形のようだった。俺はその固く閉ざされた目を見るなり、もう死んどるんやないのと指を指し、同伴で来ていた室長のおっちゃんに叱られた。
「これからな、こいつに足着けるんやて」
「……足って」
「おん、人間のな」
「相変わらずエグいことするな……」
普段、いくら既成概念にとらわれない思考でまみれている俺でさえも、不運にも海から引き上げられてしまっただろうこの人魚の行く末に思わず渋い顔になった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 50人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
兎海(プロフ) - しらたまさん» わあ、嬉しいです…！ありがとうございます！ (2020年10月16日 0時) (
レス) id: 7a66186871 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま - え、すごい好きですこの作品！！神ですか？神なんすか！？ (2020年10月15日 21時) (レス) id: 11f81e1c6c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：兎海 | 作成日時：2020年9月23日 20時
