検索窓
今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:12,696 hit

0 ページ1







 なぜこんな所に居るのかまるで思い出せなかった。海面へ差し込む眩い光にうっかり目を眩ませて…そこで記憶は途切れていた。その後の事は一切記憶に残っていないが、ここが海ではないということだけは安易に予想できる。




 

 薄暗く狭苦しいので、最初は洞窟かと思ったが、すぐに違うと分かった。
 ここら一帯見た事もないくらい、果てしなく、無機質なのだ。どこもかしこも一寸の乱れもなく、堅苦しい形たちがきちんと肩を並べてできたような空間。そして不規則性も遊び心も、目に映る新鮮さもまるで感じられない。「無」を可視化したような場所だった。刺激がなくて只々つまらない。







 それにしても、随分と長い眠りについていたような気がする。体を伝う違和感は重くて痛かった。






(………………え?)






 やがて、体の特に違和感を感じる下半身になんとなく視線を落とすなり、飛び込んできたその光景に声もなく面食らった。






 先刻まで青い鱗に包まれていたはずだった私の胴体は、付け根から裂けていた。……というのも語弊があるが、正確には一本だったモノが2本になっているということが言いたい。しかも、その先端はこれまた5本に裂けている。














「ええやろそれ。気に入った?ほんま大変やったで!切っても切ってもすーぐ再生しよったし」





「………?」







 今の今まで周りが暗くて気が付かなかったが、目の前に人間が居た。2本足で立つその姿は、まさしくいつか絵で見た人間そのものだった。本物は初めて見るので、きっと私は目を鱓の様に見開いていただろう。
 僅かな光に照らされた髪の毛はまるで、陽の光を浴びた海水のようにキラキラと反射していて、宝箱に入れておきたいほど綺麗だと思った。





「せやけど、あの状態から自分も良ぉ頑張ったなぁ……涙出てくるわ。どや?人間になった気分は。あんたが起きるの楽しみに待っとったんやで。」





「……………」





 彼の言葉は私に通じなかったが、この足は彼の仕業なのではないかと感じた。足を不思議そうに見つめる私に対し、彼は口角をくいっと上げて満足そうに笑っていたから。その笑みは、巧みな悪戯を施し達成感に満ちたような顔つきだ。






「今、もう1人お世話係呼んでくるから待っとってな。」







 そうこれはきっと泡のように儚くて、命よりも尊い。私の愛おしい日々(ものがたり)






1→



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (30 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
50人がお気に入り
設定タグ:ハイキュー , 宮侑 , 宮治   
作品ジャンル:恋愛
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

兎海(プロフ) - しらたまさん» わあ、嬉しいです…!ありがとうございます! (2020年10月16日 0時) (レス) id: 7a66186871 (このIDを非表示/違反報告)
しらたま - え、すごい好きですこの作品!!神ですか?神なんすか!? (2020年10月15日 21時) (レス) id: 11f81e1c6c (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:兎海 | 作成日時:2020年9月23日 20時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。