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夜が好きだ。反対に、眩い光で善も悪も関係なく照らし出す昼は嫌いだ。
ほとんどの場合、生き物は暗闇に居続けると消極的になる質らしい。奴らは決まって日が落ちたあとは目を閉じて眠りについてしまう。闇に目を背けて、再び朝日が昇るのを待つ。故に、闇を好む異質な俺の側に近寄ろうとする者など誰一人としていなかった。そして、いつしか俺は狠里蕕譴覆き畭減澆箸覆辰討い拭
闇と光は対称であれども、対等では無い。
その証拠として俺の獲物は遠の昔、忌々しいほどに鮮やかな金色に盗まれてしまった。盗ませたというよりも、あの時は彼女がその眩い光に導かれてしまったように見えた。そして同時に、闇を拒み逃げていくようにも見えた。
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「治、治」
「………ん、う」
「大丈夫?…うなされてたよ」
薄明かりの寝室で、心配そうに俺を覗き込むAと目が合った。俺は半分寝ぼけなまこなまま、彼女の方へとゆっくり体を向けた。
「………耳」
「ん?」
「耳…揉んでくれへん?」
「いいよ。頭痛いの?」
「最近、よぉ痛なるねん。」
「どれどれ…」
彼女の手の体温と少しかすれた声が耳全体にじんわりと伝わり、やがてずきずきと痛む顳顬に鎮痛作用した。耳を撫でられるのは、嫌いじゃない。
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「……夢見とったわ」
「どんな?」
「……なんか、嫌な夢」
実際、悪夢にうなされていた訳ではないが、構ってちゃんぽくそう言って濁した。それよりも今はカーテンから漏れる夜明けの空の色が鬱陶しかった。
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そう思っていたら突然、半開きだったカーテンがシャッと閉まった。
「…何で閉めたん?」
一瞬心を読まれたかと動揺したが、彼女は平然とした顔で俺の顳顬を再び撫でた。
「頭痛い時には、暗い所が良い。」
「………そうなん?」
「うん、痛いの治ったら朝ごはんにしよう。」
「………うん」
…やはり夜明けほど自分を弱気にする物は無い
Aがカーテンを閉めた事で、部屋の中は再び真夜中のような闇に包まれた。今までで1番、心地の良い闇だと思った。ずっとこの中に閉じこもっていたいと願うほどに。
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柔らかい体に包まれながら俺はゆっくりと目蓋を閉じた。迫り来る光に怯えながら。
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【夜明けから逃げる】28.5話
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兎海(プロフ) - kamui926さん» 嬉しいです!ありがとうございます(^^) (2021年1月11日 13時) (レス) id: 7a66186871 (このIDを非表示/違反報告)
kamui926(プロフ) - この小説すごく良かったです。 (2021年1月8日 21時) (レス) id: 1fab38a7fb (このIDを非表示/違反報告)
兎海(プロフ) - もすけさん» 頑張ります!読んでくださりありがとうございます(=^^=) (2020年8月20日 10時) (レス) id: 7a66186871 (このIDを非表示/違反報告)
もすけ - はじめまして!更新されるたび楽しく読ませていただいています!更新これからも頑張ってください(^^) (2020年8月20日 0時) (レス) id: 77771da255 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:兎海 | 作成日時:2020年8月1日 2時