最悪の光景 ページ32
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「....................は...」
侑は今、かなり混乱している。というのも、Aの祖父が彼女宛に送ってきた大癖恋愛成就のお守りが眩い光を放っていたからである。
「な、なんやねんこれ......なんで光って......」
お守りは内側からピンク色に光っては、時折心臓の如く、ドクンドクンと波打つ様に音を立てた。
その様子は少女漫画の主人公を連想させた。そう、まるで…
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「...恋?」
その言葉を口にした侑は、直感的に嫌な予感がした。
もしも仮にこれが、Aの恋心を示す信号の様なものだとしたら。これは彼女の強い恋愛感情の現れを示しているのではなかろうか。
単なる仮説に過ぎないが、こういった侑の勘は良い事も悪い事も関係なしによく当たる。故に、その事を自覚済みの本人は、たちまち狼狽の色を隠すことができなくなった。
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「...................およ?」
慌てた侑がAの様子を見に行こうと、彼女の現在の居場所を妖力で突き止めようと試みた時、もう一つの異変に気がついた。
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「......Aの居場所が、伝わって来ぉへん」
今までこんな事は一度もなかった。普通なら前世で一度番関係を結んだ彼女の、居場所は愚か、彼女の身に降りかかる危険などは瞬時に察知できるはずだ。
...そういえば、最近特に彼女の感情の起伏が薄い様な気がしていた。少し前までは怒ったり泣いたりと、何かとそういった彼女の強い感情を適度に察知していたはずだったのだが。
「....................嘘やろ」
・
全ての仮説が繋がった時、侑は暫くその場に立ち尽くした。言い知れぬ不安に今、取り乱しても仕方ない事だけは分かっていた。
______________
考えた末、侑はお守りをコンパス代わりに夜の街に飛び出した。彼女に近づけば近づくほど、そのお守りの光や鼓動は強まっていった。
「.........!」
先日ちびっ子と遊んだ公園の一角。やっとの想いで最愛の人を見つけ、安堵の溜息をつきかけた侑は次の瞬間、今見ている光景が悪い夢であってくれないかと願う程の、ショックな光景を目にしたのだった。
「..............A」
Aをゆっくりと引き寄せてその唇を貪るかのように奪った黒髪の男は、彼女に気付かれぬよう薄い笑みを侑にそっと向けた。
「遅い」と言わんばかりに
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兎海(プロフ) - kamui926さん» 嬉しいです!ありがとうございます(^^) (2021年1月11日 13時) (レス) id: 7a66186871 (このIDを非表示/違反報告)
kamui926(プロフ) - この小説すごく良かったです。 (2021年1月8日 21時) (レス) id: 1fab38a7fb (このIDを非表示/違反報告)
兎海(プロフ) - もすけさん» 頑張ります!読んでくださりありがとうございます(=^^=) (2020年8月20日 10時) (レス) id: 7a66186871 (このIDを非表示/違反報告)
もすけ - はじめまして!更新されるたび楽しく読ませていただいています!更新これからも頑張ってください(^^) (2020年8月20日 0時) (レス) id: 77771da255 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:兎海 | 作成日時:2020年8月1日 2時