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幽き者 ページ31





pm20:31






「............」



 


「いきなり何してくれとんねん.....痛いやろが」





 攻撃を食らうと共に、目の前の男を取り巻く黒い影が一層大きくなった。その静かで狂気的な雰囲気に思わず息を呑む。つい最近、人間に認知されるくらいの妖力を手に入れたばかりの私などでは、到底敵わない相手だという事は百も承知である。






 だが





「私の家族が...お前に食らった痛みや悲しみに比べれば、そんなもの」



 


 掌にありったけの妖力を込める。





「消えろ」






 爆発の直前を控えた様な掌の光を、忌々しいその黒い影めがけて打つ。















「....侑の片腕なだけあるわ。孝支くんをあそこまで追い詰めた事は素直に褒めたる.....」





「........!」





「...せやけど、そろそろ死んでもらうで」






「ぐっ..........!」












 先ほどの攻撃を物ともせず、無傷な彼の圧死してしまいそうな程鋭い眼光を放つ瞳は、限りない闇色で、何を考えて生きているのかさえ分からない。その目に一瞬の隙をつかれた。





 私がトドメを刺せなかった管狐を死に追いやった右手が、今度は私の首を捉えた。もはやここまでかと悟る。 妖狐(この身体)になってからあまり感じなくなった恐怖を久しく感じた。生まれ変わってもやはり私はこいつが怖いと、忘れては思い出す。






 だが、それが今更どうしたというのか。それを分かった上での犯行だ。どうせ死んでしまうのならば、家族を守ってくださるあの方に、何かを残してから。













「お前こそ……...侑様の、邪魔をする………」













 私が吐いた血はオサキの顔に降りかかり、それが彼の恐ろしい顔を一層際立たせた。






「…そろそろ限界やんな、」






 片腕一本で高く釣り上げられた私を見るなり、治は目を細めて微かに笑った。












「俺の妖力に気づいたんはお前が初めてやわ。」





「ふ....、そんなの管狐の心を読めば、容易いものよ。」





「.....あいつ。もっと早うに殺すべきやったわ」






 私の首に込める力が一層強まる。













「最後、何か言いたい事言っとき。」






「…………」





 その言葉に私はふ、と笑う。








「お前などに娘は渡さない」







「……あんた、ええ母親やんな」

























pm20:40

最悪の光景→←治の怖いもの



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設定タグ:ハイキュー , 宮侑 , 宮治   
作品ジャンル:恋愛
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兎海(プロフ) - kamui926さん» 嬉しいです!ありがとうございます(^^) (2021年1月11日 13時) (レス) id: 7a66186871 (このIDを非表示/違反報告)
kamui926(プロフ) - この小説すごく良かったです。 (2021年1月8日 21時) (レス) id: 1fab38a7fb (このIDを非表示/違反報告)
兎海(プロフ) - もすけさん» 頑張ります!読んでくださりありがとうございます(=^^=) (2020年8月20日 10時) (レス) id: 7a66186871 (このIDを非表示/違反報告)
もすけ - はじめまして!更新されるたび楽しく読ませていただいています!更新これからも頑張ってください(^^) (2020年8月20日 0時) (レス) id: 77771da255 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:兎海 | 作成日時:2020年8月1日 2時

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