本当にあった怖い話3 ページ28
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皆が寝静まった深更、侑の元に1匹の妖狐が現れた。深黄色の目をした綺麗な女の狐だ。
侑は一瞬驚いたように目を見開いたが、その正体が分かるとたちまち顔を緩めて笑った。
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「…驚いたわ。狐に生まれ変わったんか」
侑の言葉に妖狐は静かに頷く。
「ええ…まあ
この姿になるまで随分苦労しました。どうしても直接貴方にお礼を言いたくて」
「礼はあんたの娘に言えばええ。」
「そうですね。いつかできる日を待ちます。」
「旦那と長男には会えたんか?…」
「いえ、結局会えませんでした。」
「………さよか」
…
少しの沈黙の後、月の光を浴びながら侑はその重い口を再び開いた。
…
「も少し早く俺が来てたら、間違いなくあんたらの命も助けられたのにな。すまんかったわ……」
「……子供たちを救って下さった貴方に何の文句がありますか。」
「あんた、ほんまええ母親やな。」
「どこの母親もこんなものですよ」
彼女はそう言って、悲しそうに下を向いた。
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「私は……何一つとして母親らしい事をできずに死んでしまって、未だに心が死に切れないのです。」
妖狐は侑の目を真っ直ぐ見つめた後、丁寧にその場で座礼した。彼女が突然改まったような態度をするので、思わず侑はぎょっとする。
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「な、なんや。娘は返さんで?」
妖狐は顔を上げて うふふと笑い、「そんな事頼みませんよ」と続けた。
「オサキは必ずまた娘を狙って現れます。
私は貴方に仕え、今度こそ娘を憑物から守りたい。その権利をどうか、与えてください。」
「………あ」
…ああなんだ、と肩を撫で下ろしたのも束の間、すぐに侑はゴホンと咳払いをし、改めて向き直る。
「……そんなん、生まれ変わって来られた以上、追い払うわけにもいかんやろ。」
「やはりこの姿で来て正解でしたね。」
「作戦かいなそれ……自分、敵に回したくないタイプの狐やわ」
呆れた顔の侑を一瞥し、彼女はまたどこか遠くをみて美しく微笑んだ。
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惜しくもその命を落とした母親は、妖狐となり侑に仕え、やがて彼と共にその一家を守る金狐にまで成長した。
妖狐は、長女が生まれ変わった今もなお、彼女と一族を見守り続けているのだとか…
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兎海(プロフ) - kamui926さん» 嬉しいです!ありがとうございます(^^) (2021年1月11日 13時) (レス) id: 7a66186871 (このIDを非表示/違反報告)
kamui926(プロフ) - この小説すごく良かったです。 (2021年1月8日 21時) (レス) id: 1fab38a7fb (このIDを非表示/違反報告)
兎海(プロフ) - もすけさん» 頑張ります!読んでくださりありがとうございます(=^^=) (2020年8月20日 10時) (レス) id: 7a66186871 (このIDを非表示/違反報告)
もすけ - はじめまして!更新されるたび楽しく読ませていただいています!更新これからも頑張ってください(^^) (2020年8月20日 0時) (レス) id: 77771da255 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:兎海 | 作成日時:2020年8月1日 2時