2.温かい。 ページ2
「こんにちは、体調は大丈夫?」
心配そうに首を傾げた紫のお兄さん……誰だろう?
でも、痛くないのでこくりとうなずいた。
「起きたので、お話の続きをしましょうか」
お兄さん六人と…女の人と男の人。
「えぇ…」
女の人が、少し困ったような顔をして、お兄さんの方を向く。
「まず、君の名前を聞かせてほしいんだ」
「名前…」
私の名前…なんだっけ…
あ、そうだ
「A…」
「Aちゃんね、わかった」
…知らない人は、怖い。怖いはずなのに。
なぜかこの人たちは、とてもとても温かかった。
「Aちゃんは…お父さんとお母さんと一緒に暮らしたい?」
「…」
お父さん、お母さん…
あの人たちと暮らすのは、もう嫌だ。
そう思い、首を振った。
「そう、だよね…」
悲しそうに私を見たお兄さんは、じゃあ…と私に向き直る。
「施設で暮らすのは?」
「…やだ」
散々、言われてきた。施設に行きたいのか、そこに行ったら周りにどんな目で見られるかわからない…両親の焦ったような表情を、今でも鮮明に覚えている。
施設に行ったら、汚れてしまう気がした。
「施設は……いや」
私の言葉を聞いた紫色のお兄さんが、ちらりと女の人を見る。
「…」
女の人は、諦めたように首を振った。
「じゃあ、Aちゃん」
「?」
「俺たちと一緒に暮らさない?」
それまで黙って様子を見ていた五人のお兄さんたちも、優しく微笑んで私を見る。
この人たちなら、信じられるかもしれない。
…そう信じて。
紫色のお兄さんが差し出してくれた手を、私は握った。
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作成日時:2021年6月22日 8時