辿り着いた扉 ページ13
―第７４層攻略は、一昨日行われた。
犠牲者も出たということでヒースクリフに報告へ行ったらしい。
私は、報告について行かなかった。
それは全て、今日のためだ。
「…血盟…騎士団…」
ポリゴンの白い門に触れる。
『攻略の報告』と言って許可は取っているから、門番も咎めない。
私は息を大きく吸った。
コツコツと靴音を響かせて本部に入り、突き当たりの階段を全速力で駆け上がる。
―そう、全ては偽りだ。
報告ではなく本当の目的は。
……ヒースクリフに会うため。
ここ数ヶ月間で私は一つの結論にたどり着いた。
正確に言うと《仮説》が《真実》に変わった。
数ヶ月前のこと。
キリトから教えて貰って、超腕の良い鍛冶屋に《細剣》を拵えてもらった私は、ひたすら狩り場で細剣スキルを鍛えまくった。
理由は、《神聖剣》が正当なものか確かめたかったから。
動きがシステム最高レベルと仮定して。
強力な武具の問題なのかも知れない、と。
ヒースクリフと同じ片手用直剣の、私最高レベルは《バスク・ソード》。
だったら他の剣だったら《神聖剣》と同等くらいなのが作れるかと思って。
…無理だった。
細剣は最高傑作だったらしいから、剣は完璧なのに。
細剣は俊敏力を必要とする。
通常速度が攻略組で１、２位のパラメータを持つ私なら、特徴を生かせると思ったんだけど。
結果はアスナの１．２倍速くらいしかできなかった。
その時はめちゃめちゃ本気モードだったんだよ？
だから。
いくら自分の得意なパラメータを生かしても、限界はある。
それなのにヒースクリフのあの速度は有り得ない。
システムを上回る以上に。
それはプレイヤーじゃなくて…。
「……よく来てくれた、A君」
余裕を醸し出すような響きの声が前方から降りかかった。
会議室に来ていたヒースクリフが、私のプレイヤーネームを呼んだんだ。
「報告と聞いている。席に着きたまえ」
私は顔をあげないまま、拳を震わせた。
…解ってるくせに。
気付いて、何も言わないくせに。
プレイ初日からの色々な感情が弾けるのを、私は黙って堪えた。
「……ヒースクリフ団長」
カチャ、と腰のバスク・ソードに手をかける。
ヒースクリフは仄かに笑むだけで何も反応をしない。
…私だって解ってる。
一歩間違えれば即、黒鉄宮に叩き込まれる。
だけど迷いはない。
だって、団長は――――――――――！
私は一気に剣を引き抜いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 30人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
作者 - パスワードを忘れて編集できなくなった作者です！注意書き(ネタバレ込)を失礼します。この作品は最終的にキリトくんと夢主は友情、最高の相棒エンドとなり、主人公とキリトくんは恋愛的には結ばれません。ご了承できる方のみこの先もお楽しみください！ (2022年12月4日 21時) (
レス) id: e3bb314ceb (このIDを非表示/違反報告)
作者：ユキ - ↓ミスタッチしました。すみません！ 《旋風４》のコメント欄にて、続編企画のリクエストなど常時受付中でございます！ (2017年4月19日 20時) (レス) id: 18dde9c14f (このIDを非表示/違反報告)
作者：ユキ - 《旋風４ (2017年4月19日 20時) (レス) id: 18dde9c14f (このIDを非表示/違反報告)
作者：ユキ - この度、《夕闇の旋風》が完結いたしました！読者の皆さん、ありがとうございました！ (2017年4月19日 20時) (レス) id: 18dde9c14f (このIDを非表示/違反報告)
ユキ - 多分、外れたと思います！しぇるふぃあ。さん、ご指摘ありがとうございましたm(_ _)m (2016年10月30日 2時) (レス) id: 18dde9c14f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ユキ | 作成日時：2016年6月29日 22時
