アネモネ (ページ8)

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8 past story ページ8

わたしが中学３年生になった春から、毎週土曜にくるお客さんができた

それがユンギ先生だった

はじめてきたとき、花を選んでいる横顔が綺麗だなぁ、と釘付けになった

『すいません…俺あんまり詳しくなくて…』

『あー…じゃああの子にきいてもらえますか？すいません…』

ラッピング中だったお母さんは、花選びを私に任せた

｢えっ｣

『ごめんね、おじさんよく分からないからさ…よろしくね』

そう微笑んだ今よりもちょっとだけ若かった先生

その微笑みに胸が高鳴った

自分のことおじさんだなんて、わたしのことを一体いくつだと思っていたのだろう

『店員さんのオススメは？』

｢えっと…この時期ならたくさんありますけど…誰宛てとかにもよりますし…｣

『あっ、そうだね』

｢彼女さんにですか…？｣

『いないいない(笑)俺彼女いるように見える？嬉しい～！』

その時は友達の誕生日らしかったから、

アドバイスをしながら選ぶのを手伝った

選んでる途中で、名前とか歳とかをきかれてドキドキしながら話していたのが懐かしい

買い終わり、帰っていったあとわたしの頭の中は先生の笑顔でいっぱいだった

彼女はいない、ということにどこかでホッとした自分がいた

嘘かホントかも分からないのに

あれが一目惚れというものなのか、そもそも本当に好きだったのか分からないけど

その時から常連となった先生

土曜日を待ちわびていたわたし

名前を覚えてもらって嬉しかったり、志望校で働いてるって知ってさらに勉強を頑張ったり

まぁ好きだったんだろうなぁ

合格発表の日も先生はお店にきてくれて、

『春からよろしくね』

って優しく微笑んでくれた先生のことを好きじゃなくなったのは

もっと愛しい人が現れたから