【文スト】伍 全身黒の、美しいひと。【男主】

佰拾壱. 行方 ページ2

.



【太宰 視点】









横浜の街は守られ、鏡花ちゃんは無事に探偵社の社員になった。

…だが、ひとつ問題が残っている。






太「…敦くん、Aはどうしたの」


敦「っそれが…」






敦くんが、俯く。

…その表情の意味は、予想していた通りのことだろうか。






敦「…まだ、あの中にいるらしいです」

太「らしいというのは？」





敦くんはちらりと白髪の男性の方を見る。





ハ「彼は自らの意思で、モビーディックと運命を共にすると」

太「…成程」







強い眼差し。

彼はギルドの構成員であり、二代前の長。



…勿論、Aから得た情報だ。






太「…社長、後はお願いします」

福「何処に行く気だ」


太「私用を思い出しました」





私は貼り付けたような笑みを浮かべて、港をあとにする。




どちらにしろ、携帯は繋がらないだろう。

…彼は、何を考えているのだろうか。






太「…A」







ぽつりと呟く。





…ああ、胸が苦しい。

死にかける時とは違う痛みだ。







その感情の名を、私は知っている。


勿論自覚もしている。





…彼はあの中に残ったというが、その確率はかなり低いだろう。

Aはそういうことを平然とやる男だ。






だが若し、万が一のことがあれば。






太「何を考えているんだ、君は…」






誰もいない穏やかな街並みに、虚しく私の声は響いた。




.

佰拾弐. 心配事→←追加資料

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す