【文スト】続 全身黒の、美しいひと。【男主】

参拾陸. 約束の相手 ページ7

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【太宰 視点】







国「遅くなってしまった…」

太「ただいまーーー！あ、Aくーん！！！！」


「ああ、おかえりなさい国木田くん」

太「うわあ露骨なまでにガン無視」






社に戻ると、そこにはスーツ姿のAくんが。





…とはいっても、シャツのボタンは一つ開いているし、それにネクタイも緩んでいる。


おまけに今日はチョーカーをしていないらしく、代わりと思われる銀のネックレスがちらりと見える。



なんとレア。素晴らしい。






国「ああ、今日は例の日でしたか」

「そうそう。今年はグレーにしたんだ」

国「よくお似合いで」


「ふふ、ありがと」






私の方には一切、全くと言っていいほど目もくれずに、国木田くんと和やかに会話をしているAくん。


…ずるい。ずる過ぎる。






太「Aくーん、よく似合ってるよ〜」


「それはどうも」

太「それに今日はチョーカーしてないんだねえ」

「スーツには合わないからね」






椅子に座ってパソコンに向かっている彼に、後ろから抱きつく。

…綺麗なうなじに入れられた、刺青。




何語か分からない言語の一文なのだが、生憎私にはいつまで経っても分からない。






「太宰くん、暑いから離れてくれるかな」

太「ええ〜」

「暇ならコーヒーいれて欲しいな」






こう見えても、彼は実にさりげなく刺青を入れている。

例えばそう、右手の中指に、十字架とか。




…まあ、本人は黒歴史だとか言っていたけれど。





太「Aくんを愛でるのに忙しいんだ」

「僕よりも仕事を愛でてやってよ」




やっぱりつれないなあ。


…まあ今日は特に仕方が無いか。





Aくんと、あの人との繋がりは強いものらしいから。

でもそれは、色情とか恋とかではなく、男同士の絆のようなものだろう。




仕方が無い。出会った日とかいう今日くらいは譲ってやるとしよう。


…ね、社長さん？



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