肆拾捌. その男 ページ19
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男『…無理だな。なぜなら君は既に、負けている』
ひらりと、落ちる粒。
…間違いなく、『細雪』だ。
ル「なに?!ドアはたしかに閉まったはずなのに…」
…へえ、面白いことするね。気づいてたけど。
ふと、足音が僕の方に近づく。
男『…起きているのだろう、神楽Aくん』
「……お気づきでしたか」
ゆっくり目を開けると、目の前の男は僕に纏わり付くリボンを丁寧に解き始める。
男『どうして君だけここに?』
「僕も標的の一部だとか言われましたが…実のところは分かりません」
男『そうか…』
「…貴方、どこかでお会いしたことがありましたっけ」
僕を見つめる男性は、穏やかな顔をしてはいるが、その目は何かをひた隠しにしている。
…僕と同じ人種か。
男『…どうしてそう思うのかい?』
「なんとなく、見覚えがある気がしたので。…僕は探偵社の人間です。
話を聞いている限りだと、あの少女はギルドの人間。この辺りにはマフィアもいますから、気をつけてくださいね」
男『なるほど、探偵社の方か』
静かにそう呟く男性。
…僕が探偵社の人間であることくらい、もう知っているくせに。
「…失礼を承知で申し上げますが、貴方、本当に街医者ですか?」
男『どうしてそう思うのです?』
「…貴方の目、僕と同じですから」
不敵な笑みを浮かべ、男性を見つめる。
僕の言葉に、表情こそ変わらないものの、少しだけその瞳が揺れる。
…当たりだな。
男『君はいったい、何者なんだい』
「僕の名前をご存知なのだから、だいたいの調べはついているでしょう?でも僕は貴方を…」
僕がそこまで言ったところで、彼は自分の髪を掻き上げる。
それを見て、僕は( 表情には出さないが )はっとする。
…やっぱり僕、この人を知っている。
「…ああ、思い出した…」
そう呟いた瞬間、世界が急に元に戻る。
鳴り響くクラクション。
気がつけば、僕達は道路の真ん中に投げ出されている状態だった。
…あの人、昔資料で見たんだった。
名前は、" 森鴎外 "。
彼の仕事は、…ポートマフィアの首領だ。
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血液愛者シリウス - 過去編見たいのです!! (2016年9月7日 22時) (レス) id: e3b3e501fd (このIDを非表示/違反報告)
朱里(プロフ) - 過去編見たいです! (2016年9月6日 6時) (レス) id: ec9a45ec50 (このIDを非表示/違反報告)
夢 - 是非とも神楽くんの過去編希望です!! (2016年9月5日 22時) (携帯から) (レス) id: d9d0dd6f99 (このIDを非表示/違反報告)
しずく。(プロフ) - 続編おめでとうございます!!神楽さんがかっこよくてミステリアスで…続きがとても気になります!更新頑張ってください!応援しています…!! (2016年8月9日 19時) (レス) id: af28b8dbc3 (このIDを非表示/違反報告)
春海。・:+°(プロフ) - 窓まど□三島さん» ありがとうございます!!身に余る光栄です…これからもあたたかい目で見守ってやってください…! (2016年8月9日 17時) (レス) id: 324ed245b3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:春海。・:+° | 作成日時:2016年8月2日 22時