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しかし、相手は芸能人だ。
ただ一度ハンカチを拾って渡したというだけで覚えていてくれるわけがない。
雅斗の『覚えとくね』という言葉。
あれはただの気まぐれだったのだ。
本当は自分のことなど覚えているわけがない。
それでもAは良かった。
会えるだけで。
声を聴けるだけで。
ただそれだけで満足だと思えた。
そして、もうこれ以降は雅斗のことを忘れようと
そう、決心した。
ｻﾞﾜｻﾞﾜ
A「ここが、会場...」
Aが会場に着いて初めに目に飛び込んできたのは、たくさんの人々だった。
コスプレのようなものをしている人も少なからず居た。
吉原雅斗を含めたメンバー達の名前が入ったグッズを持っている人も居た。
Aは場違いかと思うほど普通の恰好をしていた。
いや、これで間違いということではないのだろうが...
Aの目的は吉原雅斗がAの名前を覚えてくれているのかを確認することと
もう一つ、聞きたいことを聞くことにあった。
「次の方」
Aは深呼吸をする。
雅斗「こんにちはっ！...あ...」
A「...」
二人の間に沈黙が訪れる。
雅斗「千歳Aちゃん、だよね？」
A「覚えてるんですか」
雅斗「絶対に忘れられないからね、絶対に」
雅斗は『絶対に』を強調した。
雅斗「来てくれたんだね」
雅斗はAに微笑む。
A「確認したいことがあるんです」
雅斗「今聞きたい？」
A「出来るだけ早ければいいな、と思ってます」
雅斗「明日俺オフだから。
A「じゃあ...」
「終了でーす」
A「あ...」
雅斗はやはり微笑み続けていた。
終わり
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作者名：華月 | 作成日時：2017年6月18日 19時
