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A「『Kanadome』って企業、ご存知ですか?」

拓海「『Kanadome』?あ、知ってる。めっちゃ大企業だよね。でも倒産したんやなかったっけ?」

A「はい。実は私は、その企業の、社長令嬢立ったんです」

拓海「え!?まじか!」

A「でも、倒産しちゃって、あはは」


暗い話ではあるものの、土田さんを不必要に暗くするのは良くない。

私はすこし無理して笑った。


拓海「...」

A「わたし、今、無一文のホームレスなんです。売れそうなものは全て、もちろん家も売り払って負債を返済したんです。そしたら、日用品くらいしか残らなくて。どうせなんで、一着の服を残して全て捨てました」


出来るだけ淡白に事実を答える。


拓海「それで、この公園に?」

A「その通りです」

拓海「ここに泊まるつもり?」

A「はい」


雨風をしのげるこの公園なら都合が良いから──


拓海「いかんよ!!そんなん!危ないよ!?」

A「え、え?」

拓海「行くよ」


唐突に腕をつかまれる。

そして忽ち走りだした。


A「土田さん!ちょっと!」


私が、転びそうになりながら叫ぶと、土田さんは振り向いてにこっと(にやっと?)笑った。


拓海「俺が女の子を置いて行けるような男だと思う?」

A「え、初めてお会いしたのでわからないですけど...」

拓海「そこは思わないですって言ってよ!」


お世辞にもそんなこと言えない。

なんか、女々しそう?ですし。


何分くらいだろう?ひたすら走った。

着いたのは小さな工場の前だった。


拓海「ここ、俺の家」

A「『土田工業』...」

拓海「父さんが社長で工場経営してるの。だから俺も、なに、御曹司?」

A「...わあぁ...」

拓海「ばかにしたでしょ!!」

A「そ、そんなことは...!」

拓海「ま、いいや。入ろうか」

A「え、え」


え?何?


拓海「今日だけでも泊まっていきゃあ」

A「え...」


どうしよう。

お世話になっていいのか...。

申し訳ない...。


拓海「てか、泊まってって!!まじで危ねえから!」

A「...では、お言葉に甘えて、一晩泊めていただいても良いですか?」

拓海「おっけ!そうと決まったら行こ!」

A「わわわ...」


一晩泊めていただくことになりました。

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作者名:華月 | 作成日時:2017年6月18日 19時

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