・ ページ3
A「『Kanadome』って企業、ご存知ですか?」
拓海「『Kanadome』?あ、知ってる。めっちゃ大企業だよね。でも倒産したんやなかったっけ?」
A「はい。実は私は、その企業の、社長令嬢立ったんです」
拓海「え!?まじか!」
A「でも、倒産しちゃって、あはは」
暗い話ではあるものの、土田さんを不必要に暗くするのは良くない。
私はすこし無理して笑った。
拓海「...」
A「わたし、今、無一文のホームレスなんです。売れそうなものは全て、もちろん家も売り払って負債を返済したんです。そしたら、日用品くらいしか残らなくて。どうせなんで、一着の服を残して全て捨てました」
出来るだけ淡白に事実を答える。
拓海「それで、この公園に?」
A「その通りです」
拓海「ここに泊まるつもり?」
A「はい」
雨風をしのげるこの公園なら都合が良いから──
拓海「いかんよ!!そんなん!危ないよ!?」
A「え、え?」
拓海「行くよ」
唐突に腕をつかまれる。
そして忽ち走りだした。
A「土田さん!ちょっと!」
私が、転びそうになりながら叫ぶと、土田さんは振り向いてにこっと(にやっと?)笑った。
拓海「俺が女の子を置いて行けるような男だと思う?」
A「え、初めてお会いしたのでわからないですけど...」
拓海「そこは思わないですって言ってよ!」
お世辞にもそんなこと言えない。
なんか、女々しそう?ですし。
何分くらいだろう?ひたすら走った。
着いたのは小さな工場の前だった。
拓海「ここ、俺の家」
A「『土田工業』...」
拓海「父さんが社長で工場経営してるの。だから俺も、なに、御曹司?」
A「...わあぁ...」
拓海「ばかにしたでしょ!!」
A「そ、そんなことは...!」
拓海「ま、いいや。入ろうか」
A「え、え」
え?何?
拓海「今日だけでも泊まっていきゃあ」
A「え...」
どうしよう。
お世話になっていいのか...。
申し訳ない...。
拓海「てか、泊まってって!!まじで危ねえから!」
A「...では、お言葉に甘えて、一晩泊めていただいても良いですか?」
拓海「おっけ!そうと決まったら行こ!」
A「わわわ...」
一晩泊めていただくことになりました。
14人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:華月 | 作成日時:2017年6月18日 19時