あの星と結んで２

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「頭良くて優しくて守ってやりたい。」



そう言うと、父さんが笑いながら


「何それ、阿部ちゃん？」


なんて言う。


「なんでだよ。」


俺がフラれたの知ってるくせに。


「えー？
だってそれ、俺にとっての阿部ちゃんだから。」



あれ、俺。
そういえば昔、康二に阿部ちゃんのこと、頭良くて優しくてあざとい、とか言ったかもしれない。


「親子で趣味って似んのな。
まあ阿部ちゃんがかぶった時点でそうだったってことか。」


そう言って、父さんがごくごく水を飲む。


「でも俺…阿部ちゃんのことは守りたいとか、あんま考えたことなかったかも。」


それこそあざとくて可愛いとか、綺麗とか。
阿部ちゃんへのイメージってそういうカテゴリーの言葉で。
もちろん大事にしたい存在ではあったけど。
俺が守らなきゃって、あんま考えたこと、無かったかもしれない。


「まあ、阿部ちゃんには俺がいるからね。」
「…、そっか。」
「え、何。
素直すぎて怖いんだけど。」


阿部ちゃんには父さんがいる。
その大前提があって。
だから阿部ちゃんは俺にとって、完璧な理想の人だったけど、そういう考えにあんまりならなかったのかもしれない。



「いや、まあでも、…やっぱ父さんには敵わないわ。」
「何が？」
「父さんは阿部ちゃんに対して有言実行してるけど…俺もその好きになった奴を、ずっと守りたいとは思ってたけど、実際は傷つけちゃってるからさ。」


自分の言ってることとやってることは、あまりにも違いすぎていた。


「傷つけたって…、もしかして花火大会の相手？」
「…そう。」


と言うと、父さんが苦笑いをした。



「俺ら親子、そこまで似ちゃったか。」



頭をぽりぽり掻いている。


「は？」
「いや俺も、阿部ちゃんのことは結構昔泣かせてて…。」


まじかよ…。


「蓮が言われたみたいな、一緒にいると辛いってやつ。
俺も阿部ちゃんから、一緒にいんのが辛いから別れたいっていつ言われんのかビクビクしてた時期が、正直あったんだよね。
だから繋ぎ止めるために、なかなか会えない時は夜電話かけてみたりしたんだけど、そうしたら電話口で泣かれたりとか。」


何が原因でそうなったのか、気ならないとは言わないけど、聞きたいような、聞きたくないような。

＿＿＿＿＿＿＿＿３→←闇に隠せぬそれが月。

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