ep.35 どうしてか心配してくれた彼が気になる ページ1
* 椛 side
結局、深夜0時を回ってしまい、その日は終わりを告げた。
あたしは未だに、部屋の中でベッドに寝転がり、ボーッと天井を眺めていた。
途中、澤本先輩が呼びに来たことも、葵唯や川村くん、瀬口くん達が廊下で話していたことも知ってる。
だけどあたしは、頑固として部屋を出なかった。
何故かなんて、何も分からない。分からないけど…
出たく、なかったから。
＊
数日続けて学校に行って、身体は疲れているはず。
なのに、素直に身体は休んでくれない。
午前3時を過ぎても、あたしの目は冴えきっていた。
でも、さすがに飲まず食わずでは身体が持たない。
そう思って、部屋を出て、真っ暗な廊下を歩いて食堂へとむかった。
お水かお茶くらいは、置いてあるでしょうから。
＊
パッと、キッチンの電気がついた。
予想よりもその光が眩しくて、思わず目を細める。
でも、そんな中に。
椛「…」
今、この時間に見るはずのない姿を食堂で確認し、驚いてしまった。
だって…
食堂にある椅子に座り、背もたれにもたれかかりながら、規則正しく寝息をたててる人。
長谷川くんが…
いたんだから。
＊
慎「まぶし…」
あたしが電気をつけた音に反応したのか、長谷川くんが動いた。
目を、手で覆って光を遮ろうとしているのがよくわかる。
椛「…長谷川、くん？」
慎「…ん？」
ようやく、あたしと長谷川くんの視線が混じり合った。
微かにまだ寝ぼけているけど、彼はあたしの姿を確認したようだった。
眠そうな顔をして、乱暴に頭を掻いた。
動きにくそうな様子をして、力を入れて腰を曲げていた。
慎「いって…ん、今何時？」
椛「……夜中の、3時…」
慎「…うわ」
…本気で、こんな時間になったことを後悔したのか。
とても失敗したとでもいいたそうな顔をしていた。
椛「…何で、こんなとこで…」
慎「…」
椅子に横を向いて座り、机に片肘を乗せた状態で、長谷川くんは手で口許を押さえて欠伸をしていた。
だけど、ゆっくりとこっちを見た。
慎「…あんた、一回も部屋から出なかったよね」
思わず、目を見開いて長谷川くんを見た。
でも彼は反対に、何も変わらない様子であたしの目をとらえていた。
…ずっと、気にしてたの…？
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作者名：桜花 | 作成日時：2022年4月20日 10時
