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その後、私と藤原くんは階段の踊り場にいた。
教室に戻るわけにもいかないし、川村くんが行ってからすぐに行くわけにもいかない。
そう考えた結果。
でも何故か、お互いに離れた場所にいた。
私が、わざとそうしたんだけど…藤原くんはそれを、詳しく聞いてこようとなんてしていなかった。
樹「…そろそろ10分経つし、行った方がいいかも」
腕に付けられた時計を見て、藤原くんが言った。
葵唯「…わかった」
職員室に行こうと、私は藤原くんの前を通って階段を降りようとした。
樹「…ちょっと、待って」
でも、背後からかかった声に反応して、足を止めた。
私は黙ったまま…振り返りもしないで、ただ立っていた。
樹「…壱馬のことは、責めないでほしい」
後ろから、声だけが聞こえる。
きっと、藤原くん自身も…そんなことばっかり、言いたくないんだって分かる。
樹「表面上強がってるから…どうしても、言い方が悪くなるのがあいつの悪い所。…悪気があったわけじゃ、ないと思うから」
そんなところが…優しいから。
だから…
葵唯「…しく、しないでよ」
樹「…え？」
葵唯「優しくなんて…しないでよ。そんな気、ないくせに…」
一瞬、その場に静寂が訪れる。
藤原くんの表情も、何も見えない。
それどころか…目の前が、滲んでる…。
樹「…それ、は…」
葵唯「わかってるよ…それが藤原くんだってこと。私が悪いんだってこと。でも…」
涙なんて…流れないで。
声だって…震えないで。
葵唯「でも…無駄な気持ちを…持たせないでよ」
樹「…え？」
藤原くんは、反応を示した。
だけどその時には、もう私は走り出していた。
あの場所に、いたくない。
もう…忘れさせて。
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作者名：桜花 | 作成日時：2021年5月31日 0時
