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夏輝「…君達の目の前で、彼…瀬口はクラス発表の紙を破った。僕はあの時、物陰に隠れて見ていたんです。
…ただ、僕が何かを言ったとしても祖父は何も取り合おうとしない。だから言わなかったんです。助けてあげられずに、申し訳ないことをしました」
最後のところだけは、優しい先輩だった。
真正面から私達の方を見て、頭を下げた。
夏輝「でもこの寮の管理人を引き受けたのは…僕が瀬口から離れたかったこともありました。留年しても、部屋は変わらないそうなので。…ですがもちろん、彼らへの償いも含めていました」
北人「…」
皆はまだ、驚きを隠せない。
そして、少しだけ…何もしてくれなかった先輩に、恨みのようなものを感じた。
でも…それよりも大事な何かが、それ以上に湧き上がってくる。
夏輝「…黎弥。君が僕の妹にしたことも、彼等にしたことも…決して、取り返しはつきません」
瀬口くんに視線を戻し、はっきりと先輩は言う。
やっぱり2人って…前は、友達だったのかな。黎弥って…今、呼んだもん。
黎弥「…」
瀬口くんは、黙ったまま何も言おうとしない。
妹って…確か、双子の…。
夏輝「ですが、椿姫はもう…誰の話も聞き入れようとはしない。完全に、人間不信になりました。双子の兄である僕の話すら、聞かなくなったんですよ。あなたのせいでね」
さっきから、耳が痛くなるような真実ばかりだった。
前に言っていた、先輩の双子の妹さんは…普通の人だとばっかり、思っていたから。
黎弥「…俺が何したってんだよ、お前の妹に…」
一瞬、澤本先輩の目つきがきつくなった。
瀬口くんを、睨んだ。
夏輝「まだとぼけますか…椿姫は、あなたみたいな人間でも好きになったんですよ。それを簡単に踏みにじっておいて…何故、そんな平気な顔が出来るんですか？
また…佐藤さんや彼女達に、同じ想いをさせるつもりですか？…まぁ、まずそれはないとは思いますが」
同じ想い。
それの言葉の意味が、私にはよく分からなかった。
でも…多分だけど、予想はつく。
先輩が言ってることからして、好きになった人に…裏切られるってことだよね。
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作者名：桜花 | 作成日時：2021年5月23日 13時
