�� ページ30
* 葵唯 side
樹「…あのさ、何言われたの？」
ロビーから少し離れると、藤原くんは私の腕を離してから聞いてきた。
周りには誰もいなくて、私と彼だけ。
でも…あれ？知らないってことは、咄嗟に暴力しようとしたのを止めたってだけ？
葵唯「…」
すこし、言うのをためらった。
当り前だよ…ここで理由言ったら、藤原くんにノーブラだってことばれちゃうじゃん…。
さすがに、それだけは避けたい…。
樹「…佐藤さん？」
葵唯「え？あ、いや…えっとね…」
ここで誤魔化したら…無理だよね。
絶対に嘘だってばれちゃう。
……もう、いいや。
葵唯「何かね…色々と」
樹「…ん？」
葵唯「…私ノーブラだったんだけど、それを瀬口に言われて。私は何も言ってないのに、向こうが勝手に気付いただけなんだけどね」
樹「……」
あれ。
藤原くんの動きが、止まった。
やっぱり言わない方がよかったのかな？
樹「…そっか、わかった。…悪い」
私から目を逸らして、藤原くんは言った。
…やっぱり言わない方がよかった？(２回目だけど…)
葵唯「え？」
樹「いや…何か。あ…それと、俺の姉ちゃんもそうなんだけど…男の前では、出来ればそれは止めた方がいいって…経験談みたいなことは聞いた。それだけ。じゃあ、気を付けて」
藤原くんは早口にそれだけ言うと、早々と方向転換をしてロビーの方へと戻って行った。
…あれ、もしかして…気を遣ってくれた？
…何でだろ。
何で…目が、離せないの？
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作者名：桜花 | 作成日時：2021年5月23日 13時
