君が好きだと嘘を吐きます：狐 ページ12
一つ。彼女に、幼馴染みに大きな嘘を吐きました。
どうかそれを、今此処で懺悔させて欲しいんです。
彼女は、床から離れられない人でした。病気、だったんです。
彼女の両親から聞きました。もう手遅れだと。末期で、もう治らないのだと。
彼女の両親は、彼女自身には伝えていない様でした。
『可哀想だから』
それが、理由だったそうです。私には、何も言えませんでした。
彼女は、恐らくは悟っていたのでしょう。常に浮かべる笑顔は、何処か影を落としている様でした。
「ねぇ」
「なんですか」
「わたしねぇ、」
薬からか、昔よりも呂律の回らなくなった舌で彼女は言いました。
「とわぽんのこと、すきだよ」
一瞬、息が詰まって、苦しくなりました。私は彼女を只の幼馴染みと信じて疑わず、彼女もきっとそうなのだろうと、真っ直ぐ、狂い無く信じていたのです。そうでないだろう事も、薄々気付いていたのに。
――応えられない。
詰まった私の答えに、彼女は全てを察した様でした。
「ごめんね」
「私も、」
「私も、Aの事、好きやで」
それは彼女に吐いた、たった一つの、それでいて、最も大きな嘘でした。
彼女は大きく目を見開いて、それから目を細めた後微笑んで言いました。
「ありがとう」
三日後、彼女はこの嘘に塗れた世界を発ちました。
彼女はきっと、私の言葉を嘘だと知っていたでしょう。それでも彼女は、言葉の真意を問い質す事は一度としてしませんでした。
もう一つだけ、懺悔してもいいでしょうか。
彼女が居なくなったあの日から、どうにも心に大きな穴が空いた様な、虚空が満ちています。
私が吐いた嘘は、本当に嘘だったのでしょうか。それとも、嘘から出たまこと、でしょうか。
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蒼桜(プロフ) - ななしさん» 御返事大変遅くなりました。実に丁寧なお褒めの言葉、有難う御座います。私の書いた作品を気に入って頂けて何よりです。年が明けまして、依然より亀の様な更新となると思われますが、何卒御贔屓にして頂ければ幸いです。 (2017年1月6日 6時) (
レス) id: ee0d8b7d6e (このIDを非表示/違反報告)
ななし - 貴方様の書く小説がじわりじわりと伸びて来て嬉しく思います。とても読みやすく、それでいて目が滑らない…。シンプルであっさりとした文章の構成がとてもお気に入りです。これからもゆっくりで良いので更新して頂けると大変嬉しく思います。(要約。頑張って下さい (2016年12月28日 22時) (レス) id: d27ded24cf (このIDを非表示/違反報告)
蒼桜(プロフ) - 瀬永さん» 御丁寧に有難う御座います。長編等も目を通して頂けている様で、有難い次第です。是非､心行く迄御付き合い下さいね。 (2016年5月31日 20時) (レス) id: c75b2e65f9 (このIDを非表示/違反報告)
瀬永 - コメント失礼します。 蒼桜さんの書かれる湯豆腐が本当に素敵で大好きです。狐さんの方の小説も読ませていただいてます。無理のないペースで、更新楽しみに待ってます！ (2016年5月31日 20時) (レス) id: 76f2a8e3f0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：蒼桜 | 作成日時：2016年5月23日 2時
