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side 雄也
デスクの上に置かれた紙の山は言われなくとも何となく正体が分かった。
千代岬の情報誌『ニライカナイ』の編集部に届くたくさんのお便り。
有難いことにそのうちの多くが俺の受け持っているコーナーである『SEAson』に寄せたものだった。
何せ今回は日本中が大注目の人気モデルである中島裕翔の記事を掲載したのだ。
逆にお便りの数が増えないはずがない。
『中島裕翔の魅力が輝く記事で素敵でした。次回も楽しみにしています!』
少し独特な文字で書かれた感想。
ハガキを裏返すとそこにはここの住所、ニライカナイ編集部SEAson 高木雄也様の文字。
そして左下に彼の名前があった。
『岡本圭人』
彼が一番最初にお便りを出してくれたのがいつなのか正確には覚えていない。
しかし月に二回届くお便りに、彼のものが毎回入っていた。
毎回熱心に記事を読んでくれて、丁寧に感想まで添えて。
この町のどこかにいる彼に、いつも心を救われている。
俺の仕事はこの千代岬の人柄や土地、景色などの魅力を伝える事だ。
取材をして写真を掲載する。
しかしただ掲載するだけではいけない。
ちゃんと魅力が伝わるように、何度も何度も取り直して細かい点まできっちり取材して。
もちろん小さな町だから、かつて取材をしたことのある方にも遭遇する。
するとここの人は笑顔で挨拶をし、頑張ってくださいねと温かい言葉をかけてくれる。
有難いことに、元々この町の出身ではない余所者の俺にも優しく接してくれるのだ。
実際に、前回の取材で中島さんに会う時の緊張感は凄まじいものだった。
俺が全国誌のライターならともかく、小さな編集部の小さな雑誌の小さなコーナーの編集者なのだから、どう足掻いても釣り合わない格差に怖気づいたりもした。
前日の夜はあんまりご飯が喉を通らなかったし、緊張ってこういうことを言うんだなと変なベクトルで考えていたりもした。
しかし実際に会ってみて思ったのは、彼もやっぱり千代岬の人間だったということだ。
明るい笑顔、丁寧な態度、こちらを気遣ってくれる優しさ。
記事を書きやすいようにと言葉を選んで楽しそうに話す様子に何回シャッターを切っただろうか。
最後に海をバックに写真を撮りたいと言った時も嫌な顔ひとつせずに受け入れてくれた。
そういう点ではプロのモデル。
写真も記事も申し分ない、むしろ小さな町の情報誌ではもったいないくらいになった。
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天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» お返事が遅れてしまい、申し訳ないです...!更新が遅れていますが、もう少しして夏休みに入り次第、更新ペースを上げる予定ですので、それまでよろしくお願いします! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 更新ありがとうございます!続きが気になります!!! (2018年7月3日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» コメントいつもありがとうございます!更新と返信が遅れてすみません。これから少しずつ更新していきますので、最後まで応援よろしくお願いします! (2018年7月1日 21時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 遅れましたが、新作ありがとうございます!天凪さんの作品とても大好きです。これからも無理せずに更新頑張ってください!! (2018年6月7日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
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