物語02 ページ40
生かされている人間。
空調の効いた室内は真夏とは縁遠いほどに涼しく、そして少し肌寒く感じた。
彼の作品は一体何を訴えているのだろう。
この手の中にある数枚の紙に何を託したのだろう。
「この話なんだけどさ、俺なりにちょっと考えてみたんだ。」
「へぇ、そう。」
「この話、前回の話と繋がってたりしないかなって。登場人物も違うし、根拠はないけど……雰囲気がさ、似てるっていうか…。うまく言えないけれど。」
感じたものをそのまま、と言えばいいのかわからない。
何となくでしか分からないけれど、それが正しいのか分からないけれど。
「その感想に対して答える気はないよ。言ったでしょ?僕は他人からの感想を受け取らないって。」
「…そうだよね。ごめん。」
「何でだろう、どうしてだろう。そういう疑問は常に新しい世界を作るんだよ。もしかしたら作家に向いてるのかもね。」
「作家って、俺が?」
「そうだよ。この空間には二人しかいないのに。他に誰がいるの?」
「まあ、それはそうだけど…。でもそれは流石に言いすぎ。記事を書くだけでも精一杯なのに。」
原稿を大切にファイルにしまう。
今回もたくさんのコメントが届くのだろう。
知念が目を通さない限りはその感想は誰の目にも触れずに散ってゆく。
ならばと俺が毎回コメントを読むのだが、様々な感想が寄せられて読んでいるだけでも面白い。
正直、『SEAson』に届く感想よりも具体的で読み応えのあるものだった。
ある者は自分なりの解釈を考えていたり、ある者は物語のメッセージを読み解いてみたり。
これが行灯の力なのだと思い知らされるばかりだった。
「それじゃあ今日はこれで。お疲れ様でした。」
ガタ、と音を立てて立上がる。
彼は何も言わずに頷いた。
カーテンは相変わらず締め切られ、相変わらずここは白い密室状態だった。
「あぁ、そういえば。」
外に出ようと扉に手をかけたタイミングで声をかけられる。
手を離して振り向くと、彼は何も見えないはずの窓を向いていて。
「行灯と提灯の違い、分かる?」
行灯と提灯…?
そもそも行灯というものの存在自体が分からなかったため、前にネットで調べた。
けれど何となく、やっぱり根拠はなしに単純な違いではないと思えた。
彼の求めている答えは、きっとそういう単純なものじゃなくて。
「宿題にしていい?」
やっぱり彼は何も言わなかった。
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天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» お返事が遅れてしまい、申し訳ないです...!更新が遅れていますが、もう少しして夏休みに入り次第、更新ペースを上げる予定ですので、それまでよろしくお願いします! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 更新ありがとうございます!続きが気になります!!! (2018年7月3日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» コメントいつもありがとうございます!更新と返信が遅れてすみません。これから少しずつ更新していきますので、最後まで応援よろしくお願いします! (2018年7月1日 21時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 遅れましたが、新作ありがとうございます!天凪さんの作品とても大好きです。これからも無理せずに更新頑張ってください!! (2018年6月7日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
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