解明03 ページ38
「……誰かに、頼まれたんですか？」
トーンを落とした声で有岡大貴はそう問いかける。
知らないフリをするのではなく、認めたと言わんばかりの口ぶり。
やはり俺がこの町に来たのは間違いではなかった。
「誰かに頼まれる覚えがあるんですよね？」
「……それを聞いてどうするんですか？」
質問を質問で返された。
真昼の炎天下がじわじわと迫りくるような圧迫感を覚えた。
それは、目の前の彼から伝わる感情なのか、俺の中に芽生えた感情なのか。
あるいはその両方なのか。
「いえ、趣味……と言えば聞こえが悪いかもしれませんが、個人的に知りたいだけなんです。」
「……。」
「この町に来たのも、そういう理由なんです。単に知りたいだけ。その先には何もないんです。」
「……俺にお話できることは、何もないんです。」
俯いた顔、小さく開かれた口から紡がれたのはその一言だった。
それ以上は何も話す気はないのだろう。
それを悟った俺は小さく息を吐いて踵を返す。
「気分を損ねてしまったのならごめんなさい。お花、ありがとうございます。」
相変わらずと毒々しい色を放つ腕の中の向日葵は、不気味に笑っているように思えた。
やっぱりこの町には何かがある。
6年前に一体何があったのだろうか。
「綺麗なモノには毒がある…だっけ？」
クス、と笑ってみれば真夏の日差しに照りつけられた道路がゆらりと揺らめいた。
陽炎、蜃気楼。
ゆらゆら揺れるそれは、曖昧な線を引いているようで。
境界線なんてどこにもないのに目の前に漠然と見えているような不思議な感覚だった。
・
・
「あ、伊野尾ちゃん。おかえり……ってどうしたの？その花。」
「向日葵だよ。」
「いや、それは見れば分かるんだけどさ。」
「気まぐれだよ。このお店に合うかなって思ってさ。商店街に行ったのに手ぶらなのもどうかなって思って。」
「それなら自分のものにすれば良かったのに。嬉しいけどさ。」
「ならいいじゃん。」
荷物を一番近くの席の椅子に置いた。
まだ開店準備中の店内の窓際に花を飾る。
窓から見えるあの屋敷が一層輝いて見えるようだった。
「……花は枯れちゃうからね。」
「え？」
「だから花が良いんだよ。俺はこの町から出る時に、この町のものを持って行きたくないんだよね。」
「荷物が多くなる…ってこと？」
「そうだね…まぁ、思い出だけで十分ってとこかな。」
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天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» お返事が遅れてしまい、申し訳ないです...！更新が遅れていますが、もう少しして夏休みに入り次第、更新ペースを上げる予定ですので、それまでよろしくお願いします！ (2018年7月26日 23時) (
レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 更新ありがとうございます！続きが気になります！！！ (2018年7月3日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» コメントいつもありがとうございます！更新と返信が遅れてすみません。これから少しずつ更新していきますので、最後まで応援よろしくお願いします！ (2018年7月1日 21時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 遅れましたが、新作ありがとうございます！天凪さんの作品とても大好きです。これからも無理せずに更新頑張ってください！！ (2018年6月7日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
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