検索窓
今日:5 hit、昨日:13 hit、合計:26,751 hit

片隅06 ページ33

Aは一度だけ俺の家に来た事がある。
家と言っても店の方だから、正しくは花を買いにだ。
季節は夏で、部屋に飾る花を選んでほしいと言った。



俺も店の手伝いは昔からしていたし、花を選ぶのは楽しいから好きだった。
けれどいざ友人に贈るとなると話は別だ。
花言葉も重視して、夏の花を慎重に見極めて行く。



「……これ、かな。」



すっと伸ばした手が掴んだのは向日葵だった。
夏の花の代表格のその花は窓から降り注ぐ日の光を浴びてキラキラ輝いて見えた。


「向日葵?」

「そう。向日葵。」



そっと手渡すと彼女は優しい笑顔で花を見ていた。
白いワンピース姿の彼女にはよく映えて、自分の目は間違っていなかったと少し自慢げにもなる。



「花言葉は?」

「あ、やっぱり気になる?」

「もちろん。花言葉博士の大ちゃんは意味も考えて選んでくれたんでしょ?」

「博士じゃないけど、意味もちゃんと考えたよ。」



会計を済ませて俺がラッピングをする。
慣れた作業も彼女には新鮮なようで、興味深そうに手元を見つめていた。



「たくさんあるんだけど、その中でも『笑顔』って花言葉を選んだんだ。」

「……『笑顔』って、私が?」

「そう。いつもニコニコしてて、太陽の下の向日葵みたいだなって。」



はい、と花を手渡せば彼女は満面の笑みで受け取った。
出会ってから三か月ほど。
随分と仲よくなったように思えるが、まだ彼女の知らない面はある訳で。




「だったら大ちゃんは太陽そのものだね。」

「…え?」

「私が笑顔でいられるのは大ちゃんが居てくれるから。それって向日葵と太陽みたいな関係でしょ?」



ね?と微笑む彼女につられて微笑む。
そんな風に思われていたなんて思わなくて、正直びっくりした。
だけど言われて悪い気にはならないし、素直に嬉しかった。



「太陽と向日葵みたいな関係……ちょっと詩的っぽくて綺麗な表現だね。」



流石は未来の作家さん!と拍手を贈れば彼女は一層笑顔を輝かせた。



「ねぇ大ちゃん。今度海に行きたいんだけど、一緒に行かない?」

「海?」

「うん。去年は結局行けなかったし、夏の醍醐味でしょ?」



身近な存在になりつつある海も、言われてみればこの町ならでは。
ずっとこの町で暮らしてきた俺だから分かる。



「いいよ。それじゃあまた連絡してくれたら!」

片隅07→←片隅05



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (47 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
110人がお気に入り
設定タグ:Hey!Say!JUMP , 天凪
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» お返事が遅れてしまい、申し訳ないです...!更新が遅れていますが、もう少しして夏休みに入り次第、更新ペースを上げる予定ですので、それまでよろしくお願いします! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 更新ありがとうございます!続きが気になります!!! (2018年7月3日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» コメントいつもありがとうございます!更新と返信が遅れてすみません。これから少しずつ更新していきますので、最後まで応援よろしくお願いします! (2018年7月1日 21時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 遅れましたが、新作ありがとうございます!天凪さんの作品とても大好きです。これからも無理せずに更新頑張ってください!! (2018年6月7日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:天凪 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年1月14日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。