検索窓
今日:6 hit、昨日:0 hit、合計:26,739 hit

片隅04 ページ31

「変だって思わないの?」

「変?どうして?素敵な事だと思うけど…。」



変だと思う事の方が変だ、と言わんばかりに言い切ったA。
その表情はまるで当たり前だと言わんばかりのキョトンとしたあどけないものだった。



「俺、家が花屋でさ。小さい時から花には親しみがあったんだよね。」

「そうなんだ。いいなぁ、私も小さいときは花屋さんに憧れてたんだよ。」



女の子なら誰もが憧れる夢だろう。
幼稚園の時の将来の夢の欄に花屋さんと書く女の子は実際に多かった訳だし。
俺は花屋に特別魅力を感じていたわけではないけれど、嫌だと感じたこともなかった。
きっとそれは花を買いに来るお客さんがみんな笑顔だったからだと思う。
誰かに贈るための花を選ぶお客さんの顔が優しかったからだと思う。


俺は、人の笑顔が好きだったんだとその時気付いた。



「家は千代岬……ここからだと一時間くらいかな?」

「千代岬なんだ。私も去年引っ越したんだよ。」

「千代岬に?でも通学は不便じゃない?」



電車で一時間弱のここまで通うのに、不便ではないのだろうか。
どうせ引っ越すならもう少し近いところに引っ越した方が便利なのに。



「お父さんの仕事の都合で。」

「あ、そういうことだったんだ。俺は生まれてからずっと千代岬だから、何か困った事とかあったら遠慮なく聞いて!」



えっへん、と胸を張れば彼女は優しく笑った。
その柔らかい笑顔は、俺の大好きな『笑顔』だった。



「家は千代岬の東側?西側?」



東側に住んでいるなら大体は商店街で済ませられるし駅も近い。
東側に住んでいる人は西側に行くことはあまりないだろう。
俺も学校がそうだったから西側に行っていたけれど、あれ以来は疎遠だ。



「駅が近いから、多分東側…?」

「そうなんだ。俺も東側だから案外近いのかもね。駅からすぐの商店街の『soleil』って花屋なんだ。」

「へぇ。今度時間があったら行ってみようかな。あんまり商店街には行ったことなくて。」

「うん。良かったら遊びに来て。」



気が付けば物憂げだった彼女の表情は晴れていて、良かったと胸を撫で下ろす。
彼女は徐に先ほどの手帳を取り出したかと思うと花柄の表紙を見せて言った。



「小さいときはね、花屋さんになりたいってずっと思ってたの。だけど今は作家になりたいなって。」

片隅05→←片隅03



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (47 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
110人がお気に入り
設定タグ:Hey!Say!JUMP , 天凪
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» お返事が遅れてしまい、申し訳ないです...!更新が遅れていますが、もう少しして夏休みに入り次第、更新ペースを上げる予定ですので、それまでよろしくお願いします! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 更新ありがとうございます!続きが気になります!!! (2018年7月3日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» コメントいつもありがとうございます!更新と返信が遅れてすみません。これから少しずつ更新していきますので、最後まで応援よろしくお願いします! (2018年7月1日 21時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 遅れましたが、新作ありがとうございます!天凪さんの作品とても大好きです。これからも無理せずに更新頑張ってください!! (2018年6月7日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:天凪 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年1月14日 23時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。