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片隅03 ページ30

side 大貴



その悲劇が始まったのは6年前。
思い返せば、俺が全ての始まりだったのかもしれない。
困っている人を放っておけない性格もあってか、俺は見ず知らずの人にでも手を差し伸べていた。


だから、仇になったんだね。



桜が散って、季節が春から夏に移ろうとしていた。
だんだん暑くなってきたな、と思いながら広い大学のキャンパス内を歩いていた。
君に初めて出会ったのはこの時だったね。



一人でベンチに座って、寂しそうな顔で空を見上げていた。
その横顔が妙に脳裏に焼き付いて、今でも忘れられずにいる。



「どうかしたんですか?」


そう問いかければ、彼女は咄嗟にこっちを向いた。
そして少し悲しそうな瞳に俺を映した。
驚いたような素振りは、初対面の人に話しかけられた反応としては妥当だった。


「あ……いや、ごめんなさい。いきなり…。」

「……いえ。」



未だにキョトンとしたままの彼女は何かを書いていたのだろう手帳を閉じた。
そして自分の座るベンチの隣を指さした。



「良かったら、隣どうですか?」




それが俺と彼女の出会い。


それが俺達の、悲劇の始まり。





「俺、有岡大貴っていいます。今年入学したばかりの1年なんですけど…。」

「私も1年ですよ、同い年ですね。」



ニコリと微笑む彼女は肩を少し過ぎた髪を耳にかけた。
女の子と話すことが珍しい訳でもないのに、その仕草ひとつひとつが可憐でとても綺麗だった。



「七海Aです。」




昼下がりのキャンパスで初めて出会ったにも関わらず、何故か打ち解けて。
気が付けばお互いのことについて話していた。



「面白いんだね、有岡くんって。」

「そう…かな?」

「あぁ…ところで、これは?」



彼女がずっと大事そうに抱えている手帳を指さすと彼女は表情を変えた。
驚いたような、少し怯えたような。
触れてはいけない話題だったのかもしれない、と咄嗟に話題を探す。



「あ……!もう桜散っちゃったね。もうすぐ夏が来るのかなーなんて。あのさ、桜の花言葉知ってる?」


こんな時に咄嗟に出てくるのはまたしても花言葉。
花屋の息子だ、仕方ないと言い聞かせればまだしも、初対面の男から花の話を振られても引かれるのではないだろうか…。



「……花言葉、詳しいの?」


しまった…!と痛い所を突かれて緊張が走る。
しかし彼女の口から出たのは予想とは違う言葉だった。



「素敵だね。」

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天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» お返事が遅れてしまい、申し訳ないです...!更新が遅れていますが、もう少しして夏休みに入り次第、更新ペースを上げる予定ですので、それまでよろしくお願いします! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 更新ありがとうございます!続きが気になります!!! (2018年7月3日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» コメントいつもありがとうございます!更新と返信が遅れてすみません。これから少しずつ更新していきますので、最後まで応援よろしくお願いします! (2018年7月1日 21時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 遅れましたが、新作ありがとうございます!天凪さんの作品とても大好きです。これからも無理せずに更新頑張ってください!! (2018年6月7日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天凪 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年1月14日 23時

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