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片隅01 ページ28

side 薮



「薮先生、また明日!」


ぞろぞろと退出していく生徒たちを見送って、最後の一人が出て行った。
窓の外は真っ暗で、田舎の夜は大抵こんなものだけど。
資料や参考書をまとめて電気を消す。
そうして教室を出た。



簡単な事務を終えて外に出る。
そう言えば前は、この道で涼介に会ったんだっけ?
涼介がこの塾に通っていたのがもう二年前になるなんて、時間が経つのが早いなぁとしみじみ思う。


だけどこの2年間、時間は流れて行った。
ただひたすら、淡々と。
俺を取り残して。



何年経っても、どれだけ時間が流れても、俺は何も変わらない。
6年前のあの時間に、まだ囚われたままの俺は。
6年前から一向に時間が進まない俺は。



もしかしたら、そんな単純な未来があるって考えてなかったから。
何も分かっていなかったから。




ぼんやりと夜道を照らす孤独な月明かりが差し込む室内。
あれから千代岬で一人暮らしを始めた。
ポストに投函されていたのは昼間の郵便で届いたのだろう『ニライカナイ』の最新号。


引っ越してきた当初は千代岬のことを何も知らなかったから、よく読んでいたなぁ。
もちろん今でも読んでいるけれど、やっぱり以前ほど熱心には読んでいない。
紹介されているお店やスポットに足を運んで、自分の目で確認したりして。
今では地図がなくとも小さな町の目的地には行けるようになった。



「……あれ?」



『ニライカナイ』でも特に人気の高いコーナー『SEAson』に引きつけられた。
そこに映るのは笑顔で花を持つ一人の男性。




「……大ちゃん?」



間違えたりなんてしない。
もうあれ以来一回もあっていないけれど。
6年の年月が経とうとも、大ちゃんは大ちゃんのままで。




『有岡大貴』
未だ消せずにいた連絡先にそっと手を伸ばした。
画面に軽く触れるだけで機械が自動的に大ちゃんに繋いでくれるはずなのに。


震える指が、そっと宛先の欄に触れる。


6年もの年月の末路が、この結果なんだ。
ずっとずっとこの先、一人で生きて行くのだと思っていたけれど。
時間が忘れさせてくれるはずの記憶は、俺をこの町に縛り付けたまま。


自分が救われたい。
その浅はかな願いにそっと手を伸ばしてしまった。



『久しぶりだね。急に連絡してごめん。
どうしても話したいことがあって。
空いてる日があったら連絡お願い。』

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天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» お返事が遅れてしまい、申し訳ないです...!更新が遅れていますが、もう少しして夏休みに入り次第、更新ペースを上げる予定ですので、それまでよろしくお願いします! (2018年7月26日 23時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 更新ありがとうございます!続きが気になります!!! (2018年7月3日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)
天凪(プロフ) - NMダイキング担さん» コメントいつもありがとうございます!更新と返信が遅れてすみません。これから少しずつ更新していきますので、最後まで応援よろしくお願いします! (2018年7月1日 21時) (レス) id: 73cf59f499 (このIDを非表示/違反報告)
NMダイキング担 - 遅れましたが、新作ありがとうございます!天凪さんの作品とても大好きです。これからも無理せずに更新頑張ってください!! (2018年6月7日 0時) (レス) id: 238f9174c4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:天凪 | 作者ホームページ:http  
作成日時:2018年1月14日 23時

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