「好奇心」は自分の首を絞める〜Part12〜

この気持ちは ページ28

松田は静かに近付き理樹の顔を覗き込む。


ーー「爆笑してるとこ…」ーー

ーー「もう一度見たいんだよね…」ーー


萩原が言っていた言葉を思い出し、寝顔を黙って見ていた。


「笑った顔…か…」


よく見れば整った顔立ちをしている…
ふと、理樹の頭の下に何やら数枚のメモ紙を見つけ、松田は起こさないようにそっとその紙を引き抜いた。


「……」


【松田の必要な物】

ベッド←松田、萩原と実際に見に行く

食器、箸、歯ブラシなど←萩原頑張れ

下着←萩原頑張れ

服←僕じゃ彼の趣味は知らない萩原頑張れ

リハビリに使う物←臨機応変に



「殆ど萩原だな…」


購入した物には線が引かれていた。
そして別の紙には、松田の診断書やリハビリの細かい記載がある紙…


「…」


なぜ自分の為にここまでやるのか分からなかった。
理樹と出会った記憶はない。ほぼ初対面だ。なのに何故…


「なんでお前はここまでやるんだ…？」

『…まつ…だ…』

「！！」


理樹の声が聞こえ、松田は咄嗟に持っていた紙を背中に隠す。
だが、理樹の目は開かず眠ったままだった…


「寝言か…ふぅ…」


これ以上は詮索する事もないので紙を戻そうとテーブルに手を伸ばす…


『まつ…だ…』

「また寝言か…なんだよ？」


寝言で名前を呼ばれたので、冗談半分で聞いてみる。


『よかった…ね…』

「っ！！」


ふにゃっと綻ぶように笑って呟いた…
その顔に松田は息を飲む。顔に熱が集まるのを感じた…


「っ！バッカじゃねぇの…！？」


他人の為に体張って助けて
他人の為に買い出しして
他人の為に疲れるまでリスト作って
他人の為を思って「良かった」と呟く

他人の為に…

他人の為に…


でも、その他人は自分の事で…

自分が助かった事にあんな無防備に笑って…


それはきっと馬鹿じゃないと出来ないだろう…


けどそんな奴を見てドキッとした自分が一番バカみたいな気がして……


ドスドスと不機嫌そうにリビングから部屋へ向かう。
そしてもう一度リビングに戻り……


「んなところで寝て風邪ひかれたら困るからな！」


そう言って理樹にタオルケットを掛け、松田はまた不機嫌そうに部屋に戻っていった…






『……ん』


ふと目を覚ました。


『あ…寝ちゃったのか…』


目を擦りながら体を起こすと、パサッとタオルケットが落ちた。


『あれ…？このタオルケット…松田？』


少し寝惚けた頭でそのタオルケットを拾って顔を埋める。


あ…松田の香りがする…

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