守りたいもの

零story5 ページ35

普段から化粧は薄めだが、元が整った顔をしているから綺麗だと思う。
時々仕事でしっかりと化粧をする事もあるが、どちらかと言えば薄い方が好みだ。

…ってそんな事思ってる場合じゃないな…


「すみません、お待たせしました。」


ニッコリ笑って二人に近づけば、頬を染めて嬉しそうに寄り付いてくる。


「おはようございます安室さん！」

「キャー！本当に安室さんとプライベートでデートできるなんて！！」

「お二人共今日はまた一段と綺麗ですね！」

「だ、だって安室さんとデートだもん！気合い入っちゃって…」

「うんうん！私なんて昨日美容院行ったりネイルも行きました！！」


「ほら！」と見せられたネイルは確かに綺麗に装飾されていた……
彼女はネイルなんてしない…丁寧に切って整えられた爪をしている…


「本当だ…僕とのデートの為なんて聞いたら…凄く嬉しいですね！！」


心無い偽りの褒め言葉……前にAにも言った事がある…


ーー「Aさん、そのリップ新色ですか？」ーー

ーー『気付いた！？可愛くてつい買っちゃったの！……似合わないかな？』ーー

ーー「いえ、とても似合ってますよ？そう…凄く…(キスしたくなる……)」ーー

ーー『…透さん？大丈夫？なんだか顔赤いけど…熱でも…』ーー

ーー「だっ！大丈夫です！！」ーー


いつもの通り口説いてみようかと思ったが、肝心なところで恥ずかしくなり言葉に詰まる…
情けないが、本当に好きな奴の前だと安室の調子が出ないのだ……


「それでは行きましょうか。」

「「はーい！！」」


安室を真ん中に、左右に1人ずつ立って歩き出す。
自然公園のような場所を3人で話しながら歩いていると、片側の女性が突然…


「あ、ごめんなさい…私ちょっと御手洗！！探して来るね！」


そう言ってバタバタと先に行ってしまった。
もう一人と二人きりになると、その女性は直ぐに安室の腕に手を通す。


「えへへ〜！今なら安室さん独占できるわね！！」

「おやおや、いいんですか？お友達が悔しがっちゃいますよ？」

「いーの！本当は安室さんと二人きりで来たかったのに！あの子ったらねー？」


そう言って友達の悪口を言い始めた女性に、安室は内心反吐が出る。

やれやれ…隠れた所で相手の評価を下げる…か…
だが、見てるこちらは悪口を言う相手の評価も下がりそうだがな…女は怖いな…

無駄に腕に絡みついて密着してくる女性…

これがAなら…いや、逆に歯止めが効きそうになくて危ないな…

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