050 硝子の薔薇 ページ6
きっとこの薔薇は、私に害を及ぼす物だ
恐らくあのお香も
今はまだ詳しいことは分からないけれど、できるだけ持っていない方が良いかもしれない
そう思い、私はその薔薇を箪笥の一番下の奥にしまい、お香の火を消した
……そう言えば、箪笥の中を確かめていなかった
上から順に中を見る
すると、下から2番目のところから本が一冊見つかった
読んでみると、それは奇妙なものだった
始めの数頁には昔話のようなものが一話だけ載っていて、その先は虫が這ったような文字がびっしりと書いてある
そもそもこれは文字なのだろうか
何かの暗号のようにも見えるそれを一通り眺めた後に、もう一度話を読む
内容はこのようなものだ
昔、ある町で、真面目で近所とも付き合いが良い男が妻と娘と共に幸せに暮らしていた
しかし、男は事故で妻と娘を喪う
心に深い傷を負った男は段々と憔悴していき、誰にも看取られることなく死亡
だが男は家宝の刀に魂を宿し、何百年とその家を守り続けた
数百年後のある日、町から少し離れた家はとても綺麗で住みたいという者が山ほどいるのに、誰もそこに住んだことがないという噂を聞いて、1人の僧が調べに行った
そこで男の魂を見つけた僧は男を成仏させようとするが、男はそれを拒む
それでも帰ろうとしない僧にとうとう堪忍袋の緒が切れた男は、僧を呪い殺してしまう
我に返ってそれに気づいた男は強く自責した
そして、己が創りだした闇に呑まれ、男の魂は醜い妖に変貌し、妖刀として人々を苦しめ続けた
なぜこんな話がこの本に書いてあるのか
誰も助かることなく終わってしまう、悲しいこの話は何か需要があるのだろうか
「……まるで、付喪神が闇に堕ちる時のよう……」
……いや
もしかしたら、この話はそれを基にしているのではないか
偽物のユージオ様が持ってきた硝子の薔薇
香りのしないお香
この奇妙な本
この本の話が闇堕ちを基にしているのであれば、他の頁に綴られているのは、付喪神を堕とす方法だと考えられる
そして、そんな事を企む奴らは――
『駄目じゃないか』
「っ!?」
まずい、気配を感じなかった……!
「ユージオさっ……!!」
振り返って口を開いた瞬間、首を片手で捕まれ、そのまま持ち上げられる
手に持っていた本が床に落ちる
「ぐっ……」
『あれ、その本どこで見つけたの? 前に今剣を堕とした時からどこかに行ってたんだよね』
やっぱり……
『まあ良いや。君は寝ててね』
そこで視界が暗転した
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 105人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
白(あきら)(プロフ) - 銀狼さん» ありがとうございます!頑張ります! (2019年10月13日 23時) (
レス) id: 46e374d1c8 (このIDを非表示/違反報告)
銀狼(プロフ) - 続編おめでとうございます！いつもいつも楽しみにさせて頂いております！これからも更新頑張ってください！ (2019年10月13日 10時) (レス) id: c5721a90b8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：白（あきら） | 作成日時：2019年10月13日 2時
