30 ページ31
・・・見なきゃ良かった。
職員室の角を曲がってから、
吐けるだけの息を吐き出した。
なにやってんだよ俺。
桜庭からはとっくに
謎の宣戦布告を受けてたし、
あいつとあの人が一緒にいたって
なにもおかしくない。
第一俺は、
あの人に用があってあそこに行ったのに。
夏休みのこと、
やっぱり頼もうと思って、
あの人ともっとちゃんと向き合おうって、
隠すのはやめようって、
そう思って行ったのに。
桜庭と、あの人が、・・・キス、してて。
せっかくの決意は
泡みたいにすぐ消えて、今に至る。
「A、」
下駄箱に向かって
足を踏み出そうとした瞬間だった。
「・・・口止めとか、いらないから。」
浩司に背を向けたまま、
声が震えそうになるのを必死に押さえて
言葉を吐く。
「見てたんだ？」
悪びれる様子もない。
桜庭は、表向き俺の彼女なのに。
「人の彼女にまで手ぇ出すとはな」
なんで俺。
別に桜庭のこと好きとか
そういう訳じゃないのに。
そんなことで、
浩司のこと責めたい訳じゃないのに。
「彼女とは寝てないよ」
「そういう問題じゃねぇ！！」
・・・そういう問題じゃないんだ。
別に桜庭と寝てようが寝てまいが関係ねぇ。
「・・・じゃあ、どういう問題？」
「それは、」
ごちゃごちゃの頭んなかを必死に整理して、
今一番言いたいことを探し出す。
「・・・アンタ、一体何がしたいんだよ？」
「え？」
女の代わりになれとか、
やっぱり忘れろとか、
キスしろとか。
毎回毎回、言ってることが違いすぎる。
「アンタの中で俺は、
都合のいい暇潰しなのかよ」
女がいないときには俺。
別に必要なくなったら忘れさせる。
キスしたくなったら俺。
それだって、
別に俺じゃなくたっていいみたいだ。
別に俺は、浩司のおもちゃじゃない。
「暇潰しなんかじゃないよ」
「じゃあなんで、」
なんで、
・・・俺以外のやつとキスなんかするんだよ。
「なんで、なに？」
俺がこんなに悩んでんのに、
ぐちゃぐちゃになってんのに、
なんで浩司は。
「っA、＿＿＿＿＿」
振り返って、距離をつめて、
俺の名前を呼んだ浩司の口を塞いだ。
「・・・俺は、アンタが好きなんだよ」
隠すのなんて、やめた。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 563人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
文月華胡(プロフ) - 愛香さん» コメントありがとうございます(*^^*)数あるBL作品からこの作品を見つけてくださったこと、また気に入っていただけたこと、とても嬉しいです(*^^*)本当にありがとうございます！ (2020年5月9日 23時) (
レス) id: d648e7730a (このIDを非表示/違反報告)
愛香(プロフ) - 私BLのはあまり読んだことないんですが、面白かったです！ (2020年5月8日 15時) (レス) id: 02509c761b (このIDを非表示/違反報告)
文月華胡(プロフ) - ささん» レス遅くなってしまってごめんなさい(>_<)気に入っていただけてとても嬉しいです(*^^*)活動休止中ですが、コメントいただけてとっても嬉しいです、本当にありがとうございます(* > <) (2020年3月1日 18時) (レス) id: d648e7730a (このIDを非表示/違反報告)
さ - 少女漫画みたいな恋ですね。桜庭ちゃんが良いキャラだと思います！とても好きです！ (2020年2月2日 21時) (レス) id: e07dc37db8 (このIDを非表示/違反報告)
文月華胡(プロフ) - コットンさん» コメントありがとうございます！気に入っていただけたようで、とっても嬉しいです(*ToT)ありがとうございます♪(/ω＼*) (2019年2月10日 23時) (レス) id: d648e7730a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：文月華胡 | 作成日時：2017年2月28日 19時
