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「・・・入れば」
ゆっくりと、ドアを開けた。
その向こうに気まずそうに眼をそらす浩司がいて。
なんかその目が切なくて、
なにを言えばいいのか分からなくなる。
「・・・幼馴染だからって
何でも知ってるなんてことあるワケねーだろ」
所詮他人だ。
家族だって、お互いのこと全部知ってるわけでもないのに。
俺だって、浩司のこと全然知らないし。
「A、」
「・・・なに」
「俺のお願い、聞いてくれる?」
「なんだよ」
真っ直ぐ見つめられて、今度はこっちが目をそらす。
「・・・キス、して」
「っはあ?」
なに言いだすんだよ?
「前みたいに、お前から」
前みたいにって、
あの時は子ども扱いされてヤケクソで。
自分からしたのなんて、あれが初めてなのに。
「・・・なんでんなことしなきゃいけねーんだよ」
「なんか今、とてつもなくAに触れたい気分だから」
「なんだよそれ」
別にキスなんかじゃなくてもいいだろ。
戸惑いを隠せなくて、心を落ち着かせようとベッドに腰掛ける。
「なんか今、とてつもなくAが欲しい」
「なに言ってんだよ」
なんか、
浩司の変なスイッチが入ってしまったのかもしれない。
「ねえ、A、」
座ったのは間違いだった。
「っ、離れろよ」
浩司は隣に座って、俺の首に腕を回す。
浩司の整った顔が近い。
その顔が妙に色っぽくて、
俺まで変な気を起こしそうになる。
「キスだけでいいから」
「っ、」
キスだけ、って。
それだけのことが
俺にとってどれくらい勇気がいることかも知らないくせに。
「A、はやく」
鼻の頭に浩司の吐息がかかって、
背筋によからぬ波が走った。
「・・・キスだけだからな」
その言葉は、
浩司に向けたものかそれとも俺自身に向けたものか。
「んっ、はっ、んんっ___」
何度も何度も唇を重ね角度を変え、
その度に胸のあたりがきゅ、と締め付けられる。
浩司に触れていること。
浩司が、俺を求めてること。
そのどれもが嬉しいのに、
なんかしっくりこない。
その訳も分からないまま、
舌を絡ませて、互いの熱を高め合う。
「んん、っあ、ん、___」
いつも涼しそうな浩司の顔が必死で。
・・・なんか、可愛い。
これ以上はマズい、と体で感じて、
ゆっくりと唇を離す。
「・・・母さんが、心配、してるかもしれないだろ」
まだ整わない息でそう告げて部屋を出た。
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文月華胡(プロフ) - 愛香さん» コメントありがとうございます(*^^*)数あるBL作品からこの作品を見つけてくださったこと、また気に入っていただけたこと、とても嬉しいです(*^^*)本当にありがとうございます! (2020年5月9日 23時) (レス) id: d648e7730a (このIDを非表示/違反報告)
愛香(プロフ) - 私BLのはあまり読んだことないんですが、面白かったです! (2020年5月8日 15時) (レス) id: 02509c761b (このIDを非表示/違反報告)
文月華胡(プロフ) - ささん» レス遅くなってしまってごめんなさい(>_<)気に入っていただけてとても嬉しいです(*^^*)活動休止中ですが、コメントいただけてとっても嬉しいです、本当にありがとうございます(* > <) (2020年3月1日 18時) (レス) id: d648e7730a (このIDを非表示/違反報告)
さ - 少女漫画みたいな恋ですね。桜庭ちゃんが良いキャラだと思います!とても好きです! (2020年2月2日 21時) (レス) id: e07dc37db8 (このIDを非表示/違反報告)
文月華胡(プロフ) - コットンさん» コメントありがとうございます!気に入っていただけたようで、とっても嬉しいです(*ToT)ありがとうございます♪(/ω\*) (2019年2月10日 23時) (レス) id: d648e7730a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:文月華胡 | 作成日時:2017年2月28日 19時