ぶつかることを恐れちゃいけない ページ16
意識を戻した智の生活を支えることは、自分が思っていた以上に辛く、苦しいものであった。
一番困ったことは、智が食事を全く受け付けなかったことだ。
このままでは栄養不足になってしまうということで、仕方なく点滴で栄養を補うことになった。
しかし、智は目を離すとすぐに点滴針を抜いてしまった。
何度言い聞かせてもその行為が止まることがなかったために、俺は食事の間中、智が剥がさないように針をずっと抑えていた。
けれども、智は日に日に痩せていった。
それは、生きていることを拒んでいるからだと思った。
自分でもどうしたらいいか分からず、智に隠れて泣いていた。
そんなある日のことだった。
久しぶりに、祖母が病院に顔を出した。
少々やつれた俺を見て、祖母は眉をひそめた。
「あら、あの時の言葉の割にはずいぶん疲れた顔してるわね。
そんなんで大丈夫なの？今にも倒れそうじゃない。」
祖母の言葉はまるで、俺を攻めているように聞こえて、俺は日頃溜まっていたストレスが爆発してしまった。
「うるっさいな！！
俺だって精一杯やってるんだよっ！！」
しかし、俺の怒鳴り声に、祖母は顔色一つ変えず俺を見つめた。
そして、俺の頬に手を伸ばし、優しく包んだ。
「あんたが頑張ってるのは、よくしってる。
この前、智くんのために生きたいって、人生捧げたいって言ったよね？
けどさ、自分をおざなりにしてると、あんたまで壊れちゃうよ。
それじゃあ、ダメじゃないか。
たまにはさ、智くんを気遣うばっかじゃなくて、あんたのわがままとか気持ち伝えなきゃ。
今、智くんを傷付けないようにしていたって、いつかは必ずぶつからなきゃいけない時が来る。
それを恐れてちゃダメだよ。」
祖母の言葉は、真っ直ぐ俺の心に突き刺さり、肩の荷をそっと下ろしてくれた。
「また泣くのかい？あんたは、いつから、こんなに人間らしくなったんだろうね。」
泣き出す俺を、祖母が優しく抱きしめてくれた。
未来を見つけられなくて漠然と生きていた以前の俺より、泣いて悩んで苦しんでいる今の俺の方が、よっぽど人間らしいと祖母は笑った。
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izumi(プロフ) - 碧さん» コメントありがとうございます！領さんと零治さんは一見性格が真逆に見えますが、根っこの部分は一緒で息ピッタリです。領さんは家柄＆兄ということから、我慢することに慣れているじゃないかと考え書きました。感動していただけるなんて...！感無量です(><) (2016年12月31日 13時) (
レス) id: 1b12000313 (このIDを非表示/違反報告)
izumi(プロフ) - みーこさん» コメントありがとうございます！ニノも従兄弟の2人も智くんを思う気持ちは強いです。しかし、信頼関係を考えるとやはりニノしかいない！と思って私も書いています(*^^*) (2016年12月31日 13時) (レス) id: 1b12000313 (このIDを非表示/違反報告)
碧(プロフ) - 領くんと零治くんすっごくいい兄弟だなと思います( ；∀；)領さんの心情とか読んでいるだけで感動しました(*´ω｀*) (2016年12月31日 12時) (レス) id: 24fc974975 (このIDを非表示/違反報告)
みーこ(プロフ) - この状態なら、やはり和くんが傍に居続けた方が、滅多に会ってない従兄弟と居るよりも良いですね。 (2016年12月17日 13時) (レス) id: 5ae3e13203 (このIDを非表示/違反報告)
izumi(プロフ) - みーこさん» みーこさん、いつもコメントありがとうございます！おばあちゃんは、ニノの良い理解者という立場で書かせていただいています。親子とはまた違う一歩引いた立場だからこそ、ニノの決意に即答できたのだと思います。(^^*) (2016年12月11日 22時) (レス) id: 1b12000313 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：izumi | 作成日時：2016年12月4日 17時
