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side Taiga
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久し振りの副作用にやられて，横になっていることしかできない。この調子では，明後日予定されていた出版社のアポイントメントも対面では厳しいだろう。オンラインにしてもらえないか交渉しなくては，と思う。
延期にはしたくなかった。
…少しでも早く，松村くんに絵本を届けてあげたかった。
「…少し落ち着いた？」
Aが心配そうに俺の顔を覗き込む。
困ったように八の字になるAの眉が愛おしくて，わけもなく微笑んでしまう。
「…さっきより，マシになったかも」
「よかった。…まだ顔色良くないね。もし気持ち悪くなったら教えてね」
「…ありがと」
吐き気どめを飲んだおかげか，さっきより幾分か落ち着いたような気がする。Aは俺の頭を優しく撫でてくれた。
「ふふ，何？」
「…大我が元気になりますようにって」
「…おまじない？」
「そう，おまじない」
小さな子どもに話しかけるようなAの声。
Aは俺たちの子どもにも，こうやって優しく，ベールで包むみたいにふんわりした声で話しかけるのだろうか。その光景は易々と想像できる。赤ん坊を抱いて，その子に話しかけるA。
「A」
「ん？」
「…やっぱり，Aが1番の薬みたい」
「ふふっ，私が全部治してあげよう」
Aはそう言って，おどけて笑う。
彼女といると，本当に心安らぐ。
どんな薬も，Aの存在に比べたらちっぽけな効果だとさえ思うほどに。
「A，ご飯まだでしょ」
「あ，そうだった」
「…ごめんね，手間かけさせちゃって」
「んーん。副作用が出るのも，身体が頑張ってる証拠でしょ？ご飯作るけど，匂い平気？」
「うん，大丈夫」
「寝ちゃっていいからね」
彼女はキッチンに移動して，手際よく何か野菜らしきものを切り始めた。多分にんじん。
その音を聞いているうちに瞼が重たくなってくる。
気がついたら眠りに落ちていた。
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作者名：chapi
| 作成日時：2023年9月13日 21時
