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side Taiga
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「ルノワールは…優しくて明るい人だったみたいだよ」
「…へぇ」
「でも，彼の人生，明るいだけじゃないんだ」
戦争で友達を失ったり，息子が負傷したり。
妻がその翌年に他界したり。
本人もリウマチに悩まされていたらしい。
「でも，そんな暗い部分は隠して，幸せな絵を描き続けてた」
松村くんはほんのり微笑んだ。
「……俺，思うんです」
「ん？」
「ルノワールは……幸せな絵で，みんなを幸せにしようとしたんじゃないかなって。…自分が辛くても，それを隠して…みんなに幸せになって，ほしかったんじゃないかなって」
僕の母がそんな人でした，と，松村くんが言う。
辛いときこそ明るさで，人を幸福な気持ちにさせる。
ルノワールが成し遂げたことは，とても大きな愛に溢れたことかもしれない。
「……先生の絵も，見ると幸せになる」
「…ふふ，ルノワールに並べるのか」
「大げさじゃないですよ。……先生に出会えて，ほんとに，よかった」
松村くんがくれる愛の言葉に，涙が出そうになる。
絵を描き続けて本当に良かった，と改めて思う。
「…せんせ，外，寒い？」
「うん。…もう冬だね。…12月だもんな，当たり前だよね」
「…そっか。…冬まで生きられるって思ってなかった」
生きること，諦めなくて良かった。
松村くんはそう言って，はにかむように笑う。
諦めないことがどれほど大事か。本当の意味で，知った気がした。
「…俺も，諦めないよ。どんな状態でも，描けるなら絵を描こうと思う」
「そうしてください，先生の絵は，誰かの生きる希望だと思います」
そんな話をしているうちに，もうお昼ご飯の時間になろうとしている。そろそろお暇した方がいいだろう。
「じゃあ，そろそろお暇しようかな」
「…はい。…先生，気をつけて帰ってください」
「…ありがとう」
「先生，さようなら」
松村くんが腕を持ち上げて，小さく振る。
またね，と手を振って，病室を出た。
絵本が完成したら，そのまま病院に持って行こうと決める。
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作者名：chapi
| 作成日時：2023年9月13日 21時
