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side Taiga
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「こちらの椅子に座ってください」
「はい」
隣の部屋に移動すると，いくつかマッサージチェアみたいな形のリクライニングチェアとベッドが置いてあって。
ここで抗がん剤の点滴を打っていくらしい。
カーテンが閉まっているところは，今使用中。
当たり前なんだけど，病気と闘っているのは俺だけじゃないんだな，と思う。そして少しだけ，頑張ろうと思える。
椅子に腰掛けると，看護師さんが点滴の用意をしてくれた。薬が一滴ずつ，身体の中に入っていく。
「気分悪くないですか？」
「大丈夫です」
「もし具合悪くなったらナースコールしてください。点滴終わる頃また来ますね」
点滴が終わるまでは，割と自由。
寝ていてもいいし，読書していてもいいし，動画を見ていてもいいし。俺は耳にイヤホンを差して，音楽を流す。ランダム再生したらロック音楽が流れてきて，少し笑いそうになった。今の気分は，多分，ロックじゃない。
バラード曲が収録されたアルバムを選択し直す。
優しいメロディが鼓膜を揺らす。その優しさに身を委ねていたら，なんだか眠たくなってきた。
目を閉じて，ゆらゆらと眠りの中に沈んでいく。
「京本さん，終わりましたよ」
看護師さんに声をかけられてハッと目が覚める。
浅い眠りに落ちているうちに，点滴が終わっていたらしい。そっと針が抜かれて，止血用の小さな絆創膏が貼られた。
「体調，変わりないですか？」
「はい，今のところは」
「2時間くらい経ったら副作用が出てくるかもしれないので，体調悪くなったらゆっくりしてくださいね。あと，こちら処方箋になるので，帰りに隣の薬局で受け取ってください」
「ありがとうございます」
内服用の抗がん剤の名前が書かれた処方箋。
薬局に寄る前に，松村くんのところに少しだけ寄って行こうか，と思い立つ。循環器内科の入り口で面会手続きをして，面会証を受け取った。
病室に向かおうとすると，「あ、北斗くん，こちらです」と以前顔見知りになった看護師さん(おそらく松村くんの担当看護師さん)に声をかけられた。病室を移動したのか，と思いつつ，看護師さんに着いていく。
「…え」
案内されたのは，心臓血管疾患集中治療室，と文字が書かれた部屋だった。
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作者名：chapi
| 作成日時：2023年9月13日 21時
