ブルー・モーメント (ページ10)

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side Taiga
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日曜日の午後。
電車に乗ってAの勤務する高校の文化祭に足を運んだ。
高校生たちの保護者から，近くに住んでいる人まで，大勢の人で賑わう校舎。
文化祭，とブロック体でレタリングされた看板。俺たちが放課後に描いたときように，この高校の誰かが描いたものなのだろう。ビビットカラーの配色で，よく描けていた。
3年4組，メイド喫茶，というプレートを胸につけてメイド服を着た高校生の男の子が，やたら生き生きと文化祭のパンフレットを渡してくれた。

Aのクラスである1年2組の演劇がこれから始まるらしい。案内されるがまま，1年2組の教室に向かう。教室はカーテンが閉められていて，椅子や机，段ボールなどを駆使して舞台セットが組まれていた。
着席してしばらく待つと，『ロミオとジュリエット』の舞台が始まった。
一生懸命に演じる高校生たちの姿は微笑ましかった。俺が働く高校の文化祭は11月にあるようだけど，何をするのだろう，と頭の隅で考える。
1時間位で上演が終わり(シェイクスピア戯曲だが相当端折ったらしい)，高校生たちに拍手を送る。
ありがとうございました，と挨拶してくる高校生の姿が眩しかった。

教室の外に出ると，まばゆい光が目に飛び込んできて一瞬めまいがした。
少し目を閉じたら収まってホッとする。

「14時から中庭で合唱部のミニ・コンサートやりまぁすっ，ぜひ来てくださぁい」

どこからか，元気のいい女の子の声が聞こえた。
合唱部だから，Aの担当か。これ見て帰ろう，と中庭に足を進めた。
合唱部の前が吹奏楽部だったらしい。聞いたことがある曲が，ブラスバンドで聞こえてくる。
確か，新宝島だったっけ。俺たちが学生のときも吹奏楽部が演奏していた。
その曲が終わると，観客から拍手が起こって合唱部と入れ替えになった。

Aが指揮として，前に立って頭を下げた。
長い髪を1つに束ねて，楽しそうに指揮をとる彼女。
その指揮に合わせて，ソプラノ，メゾソプラノ，アルトが混ざって耳に届く。

「上手ねぇ」

生徒の家族らしきおばあさんが，嬉しそうにそう呟いていた。
心地よく聞こえる合唱と，それをまとめるAに，俺もワクワクするような気持ちにさせられた。