ブルー・モーメント (ページ7)

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side Taiga
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翌日，Aを見送ってから出版社に向かった。
普段は打ち合わせをして，メールでラフスケッチと原稿の内容の確認をしてもらってから本格的に絵に手を付ける，というのが一連の流れだ。
そして，締切までにできた原画と原稿を持って出版社に行く。
これを気づけばもう5年以上繰り返している。

俺が描く絵本はそこそこ売れているようで，どうにか絵本作家として食べていけている。
それはものすごくありがたいことだ。

「京本さん，今回も素敵です」
「ありがとうございます。修正箇所とかは」
「今のところ大丈夫かと。また何かあればメールでご連絡します」
「はい。お待ちしています」

絵と文章を確認してもらって，そんな当たり障りのない会話をして出版社を後にした。
整形外科の病院の予約の時間が近づいている。
地下鉄に乗って，昨晩予約した整形外科に向かった。

インターネットのマップを確認しながら進むと，オレンジ色の外装の病院が見えてきた。
中に入ると，オルゴール調の音楽が流れていて，暑さが和らぐ。

「予約した京本です」

受付で名前を告げると，問診票の記入をお願いします，と40代くらいの看護師さんにバインダーを渡された。
待合室の椅子に座って，ボールペンで記入していく。

症状がある部位に丸をつけてください，という文面の下に，人間の絵。
右手のところを丸で囲んで，次の質問に答える。
どのような症状ですか，何日前からですか，現在治療中の病気はありますか，食物アレルギーはありますか，飲酒や喫煙についてお聞かせください，と質問が並んでいる。
全てに記入してさっきの看護師さんに渡す。スマートフォンを見て待っていると，京本さん，診察室にお入りください，と声がした。さっきの看護師さんよりも甲高い声の人だった。

診察室に入ると，初老くらいの男性が座っていた。
どうも，とにこやかに挨拶されて，会釈を返す。

「右手が痺れるの？」
「はい。昨日から。一昨日，長時間作業していたのが原因だと思うんですけど」
「ご職業は？」
「はぁ，一応絵本作家をしてます」

じゃあ腱鞘炎かもね，と医師は言った。
触診をされて，痺れる部分について話し，念のために手のレントゲンを撮った。

「うーん，異常はなさそうだな。炎症までいってないのかも。湿布出しておくね。全く動かさないのは難しいだろうけど，右手の使いすぎに気をつけて。」
「ありがとうございます」

その日は薬局で湿布をもらって帰宅した。