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side You
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「ねぇ，大我」
「ん」
「……治療，受けるでしょ？…お願い，受けるって言って」
「A…」
私のわがままかもしれない。
でも，大我を失うことの方が何倍も，何十倍も何百倍も嫌だった。
「……A」
「…何？」
「俺と，別れてくれる？」
大我から発された言葉に，思考停止する。
突然何を言い出すのだろう。
「何言って……るの？」
「俺はさ，Aに迷惑かけるために結婚したわけじゃないんだよ。…悲しませるためでもない。…でも，このまま俺といたら，Aは確実に悲しい思いをすることになるでしょ？…子どもだって望めないし」
俺と一緒にいても，Aを不幸にするだけだから。
大我は暗い瞳でそう言った。
視界がゆらゆらと揺れる。悲しいだけじゃなくて，やり場のない気持ちとか，怒りとか，色んなものが溢れて涙になっていた。
「どうして，どうしてそうやって，私が不幸だって決めつけるのっ」
気づいたら私は泣きながら，そんな風に言っていた。
「大我と結婚したのは，子どもが欲しいからじゃないしっ，大我との子だから欲しいだけで，それで大我を失うなら子どもは望まないよ…っ。私は大我のことが好きなの，大我と結婚した時点で，大我の運命も一緒に背負う覚悟はついてんのっ，」
もう止まらなくなって，私は幼い子どものようにわんわん泣いた。泣きたいのは大我の方だろうに，私は泣くのを止められなかった。
苦しい。悲しい。どうしたらいいか分からない。
そのとき，大我が私をぎゅっと抱きしめてくれた。
「……A，ごめんね。ありがとうね。……A」
「…別れる，なんて言わないで…」
「…うん。…俺，治療，受けるよ」
涙でぐしゃぐしゃな顔を上げると，大我は困ったように微笑んでいた。…困らせちゃったかな，と少しだけ後悔する。
「……ごめんね，私が感情的になっちゃって…。治療，受けたくないなら，無理しなくてもいいよ」
「んーん。無理してないよ。…Aと一緒にいたいって，俺が思って決めたことだから」
「…本当に？」
「うん。…別れようなんて，俺こそ自分勝手だったね」
ほんとだよ，と私は大我を抱きしめ返した。
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作者名：chapi
| 作成日時：2022年9月5日 0時
