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side You
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「…生検の結果ですが」
田中先生は，私と大我を交互に見てから話し始めた。
「…残念ながら，腫瘍は悪性でした」
「…悪，性」
覚悟していたことなのに，頭の中が真っ白になる。
悪性，ということは…？
数値や位置，腫瘍の大きさについて田中先生が説明をしてくださっているのだけど，何も頭に入らない。
呼吸が浅くならないように，鼻から息を吸い込む。
隣に座る大我の手が，私の手を強く握った。
「腫瘍は，ほぼ100%の確率で再発します」
「…それは」
「……グリオーマに関しては，まだ有効な治療法が見つかってないんです。5年後の生存率はかなり低いです。……平均余命は1年と少しです。……もちろん，個人差はありますから，それ以上生きる方もいらっしゃいます」
言葉を失う。14ヶ月，とインターネットで見た情報が頭をよぎる。大我の顔を見ることができない。大我の気持ちを考えただけで，そのまま息ができなくなりそうだった。
少しの沈黙の後，大我が口を開いた。
「…それより，短いってこともあるんですよね」
田中先生は渋い顔をして，小さく頷いた。
「…90%以上手術で取り除くことができれば，まだ完治の可能性があったのですが…大我さんの場合，神経や幹部と接している腫瘍も多かったので…。放射線治療と化学療法…抗がん剤ですね。…それで，腫瘍が大きくなるのを抑えていきましょう」
理解が追いつかない。
もし，その薬が効かなかったら，大我は死んでしまうのか？
固まっている私たちに，田中先生は更に残酷な現実を告げた。
「……それで，治療に入る前に1つ…。お二人に関わることなので，お話しさせてくださいね。…放射線治療をすると，生殖機能が失われる可能性があります」
脳の手術後ということもあり，精子凍結も難しいらしい。
子どもはもう持てない，と言われたようなものだった。
「…あの」
大我の声が部屋にそっと響く。
「……治療するかどうか，少し結論を待っていただけますでしょうか」
「大我！」
何を言い出すの，と彼の名前を呼ぶ。
田中先生は「もちろんです」と頷いた。
「治療は早い方がいいと思うので，結論が出たら連絡お願いしますね。…お2人でよく話し合ってくださいね」
それから，どうやって病室に戻ったのか，よく覚えていない。大我の病室で，私たちは向かい合ったまま静かな時間を共有していた。
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作者名：chapi
| 作成日時：2022年9月5日 0時
