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side Taiga
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手術の翌日，午前中のうちに一般病棟に戻された。
今日はまだベッドの上で安静にしてください，と看護師さんから説明を受ける。身体を起こすことは許容されるらしい。
それでも，頭痛と吐き気，熱っぽさで気分が悪くて起き上がれそうになかった。酸素マスクもまだつけられていて，カテーテルで繋がれて，なんだか自分の身体が自分のものじゃなくなってしまったみたいだ。
不調を訴えると，痛み止めと吐き気止めが含まれた点滴を打たれた。ご飯は食べられそうになくて下げてもらった。
しばらくして，扉が叩かれて。
返事をすると，Aが入ってきた。
入院してから曜日感覚がなくなりつつあったが，今日は土曜日らしい。
「大我，おはよう。体調…良くはないか」
「うん……でも，昨日より大分マシ…かな」
昨晩は本当に苦しかった。
身体が体温調整できていないせいか，妙な汗が止まらなくなった。寒いのに汗だくで，眠ることさえもままならなかった。
「無理しなくていいからね」
「うん」
Aは何も言わずに俺の手を握っていてくれた。
彼女の存在の大きさを，身体全体が感じ取っている。
Aの手の温もりがあるだけで，苦痛が和らいでいくような気がした。
「……A」
「ん？」
「…ありがとう」
「何が？」
「全部」
どういたしまして，とAは笑った。
薬が効いてきて，痛みと吐き気が引いたからか，昨晩の浅い眠りのせいか，眠たくなってきた。
「…大我，眠い？」
「少し…昨日の夜，あんま眠れてなくて…」
「そっか。眠れそう？」
「ん」
「ゆっくり寝て。おやすみ」
Aの手を少し握り返す。
彼女は繋いだ手と反対側の手で，俺の手の甲を優しく撫でてくれた。
彼女といること自体が1番の薬になっているのかもしれない。
「A？」
「ん？」
「…おやすみ」
なぜか，言うべきことのような気がして。
Aは微笑みながら「おやすみ」と返してくれた。
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作者名：chapi
| 作成日時：2022年9月5日 0時
