ブルー・モーメント (ページ43)

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side You
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手術が終わって，案内された集中治療室。
それだけ大きな手術だったのだ，と思い知らされる。

面会は1人だけ，なおかつ15分以内だということだったため，大我のご両親が私に行くように言ってくれた。
滅菌キャップとガウン，それから手袋をつけられて中に入る。

大我はベッドの上で酸素マスクをして横たわっていた。
頭に巻かれた包帯は痛々しくて，なんだか苦しい。

「大我」

私は彼のそばに寄って声をかけた。
大我は小さな声で「ただいま」と返事をした。
行ってきます，行ってらっしゃい。ただいま……

「おかえり」

こうして言葉を交わせたことに心の底から安堵する。
右手も完全に感覚を失ったわけではなかったらしい。
……大丈夫，きっとこれから何もかもうまくいく。

大我の右手を握りながら，そんな気持ちになる。

そのとき，そろそろお時間です，と看護師さんが申し訳なさそうに言ってきた。また明日来るから，ゆっくり休んでね，と声をかけて立ち上がる。術後で大変だろうに，大我は「気をつけて」と私の心配をした。

今日は夜間救急の出口から出て，車に乗り込む。
エンジンをかけると，カーナビに23:03の文字。
夜のラジオから，名前の知らない女性アーティストの声が聞こえる。ギターと素朴で優しい音色。

明日の昼には一般病棟に移れるらしい。
まだベッドからは動かせないけど，身体を起こすことは許可されるみたいだ。

あとは生検の結果次第だ。
どんな結果でも受け止める覚悟はできているつもりだけれど，もしも悪性だったら……。
5年後の生存率は10%以下だと言われる。
その事実を突きつけられたとき，私は，そして大我はそれを受け入れることができるだろうか。

…奇跡を信じ続けることしかできないのだろうか。

悪い未来を考えたくなくて，ラジオの音量を上げる。
さっきの女性アーティストが，優しい声で未来への希望を歌いかけてくる。