ブルー・モーメント (ページ41)

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side You
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大我が手術室に入って数時間。
10時間くらいかかるのは承知だったけれど，それでも待っている時間が長く感じる。

どうか，大我を守ってください。
私からあの人を奪わないで。
そんな風に，ひたすら祈りを込める。

家族待合室は畳の部屋で，テレビと座布団と小さなテーブルが置かれていた。私は部屋の端で，膝を抱えていた。

「Aちゃん，大丈夫？」

お義母さんに声をかけられて，ハッと顔を上げる。
お義母さんはビニール袋からサンドウィッチやおにぎりをいくつか取り出してテーブルに並べた。

「もうお昼過ぎちゃったから。少しは何か食べた方がいいと思って。Aちゃん，好きなの食べて」
「そんな，お義父さんとお義母さんがお先に選んでください。私はその後でいいので！」

遠慮すると，お義父さんとお義母さんは顔を見合わせて笑った。その雰囲気の暖かさに，大我の暖かさの理由を垣間見たような気持ちになる。

「先に選んでいいんだよ」
「そうよ。Aちゃんも娘みたいなものだし」
「…ありがとうございます」

ハムとレタスとチーズのミックスサンドウィッチを選ぶ。
いただきます，と開封して，口に運んだ。
何の変哲もないサンドウィッチのはずなのに，今の私にはその全てが優しく愛おしく感じられた。

そのあとは内容も頭に入っていないまま，ぼんやりテレビを見ながら過ごした。時々，田中先生が入ってきて，手術の進捗状況を教えてくれた。

腫瘍は思ったより大きく，位置も脳の深いにも浸透してしまっていたせいで，今回の手術で全部取り切るのが難しいらしい。
腫瘍は生検に回して，良性か悪性かの検査結果を待つ。
良性ならそのまま退院後は自宅で様子を見ながらリハビリに通い，悪性なら入院期間を延ばして放射線治療と抗がん剤治療をする，ということだった。

手術が終わりました，と看護師さんが私たちを呼びにきたのは，22時頃だった。