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side Taiga
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病気のことをありのまま話すと，父も母もショックを受けていた。当たり前だと思う。この腫瘍が悪性だったら平均余命は14ヶ月だというし，そうでなくても手術はリスクを伴う。
それでも，俺とAの決断を受け入れてくれた。
少しして，Aが戻ってきた。
俺に気を遣って，席を外してくれていたのだろう。
「A，ごめんね。ありがとう」
「ん？お水買いに行っただけだから，気にしないで。あ，さっき北斗くんに会ったよ」
「北斗，あぁ，松村くんか。え，A，知ってたっけ？」
「北斗くんが教えてくれたよ。大我，スケッチブックに私の絵描いてたんでしょ？それで分かったって」
「…嫌だった？」
「そんなわけないでしょ。あ，北斗くん，大我によろしくって」
いつの間に描いてたのよ，とAは明るく笑う。
彼女の笑い声に，暗い雲のように心を覆っていた手術や病気への不安感が消えていく。
「京本さーん，移動お願いします！」
高い声の看護師さんが，部屋に入ってきて俺を呼んだ。
いよいよ手術だ。
「じゃあ…。行ってきます」
俺はいつも通り，まるで仕事に行くみたいに両親とAに挨拶をした。Aもいつも通り，行ってらっしゃい，と優しく返してくれた。
「…必ず，ただいまって，戻ってきてね」
「もちろん」
左手でAの頭を撫でる。彼女は何度も何度も首を縦に振った。俺が手術されている間は，3人は家族待合室で待ってくれるらしい。
病室を出て，看護師さんに案内されるままに手術室に向かう。入り口で色々と(名前とか生年月日とか)確認されて，シンプルに回答していく。その後，手術室の中に通された。
ドラマで見るセットみたいだ，と思う。
我ながらめちゃくちゃ呑気だな，とも思った。
真ん中の台に横になるように言われて従うと，心電図モニターやら血圧計やらパルスオキシメーターやら，色々と身体につけられた。それから外科の先生や麻酔科の先生から色んな説明をされた。
「では始めますね。ちょっと点滴打ちますよ」
「はい」
「酸素マスクします。ゆーっくり呼吸してください」
ゆっくり，深呼吸。だんだん眠くなっていきます，と声をかけられた。眠いとか眠くないとかを認識する前に，俺の意識はフッとどこかに持って行かれた。
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作者名：chapi
| 作成日時：2022年9月5日 0時
