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side You
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午前9時を過ぎた頃，大我のご両親がいらっしゃった。
お義父さんもお義母さんも，私のことも実の娘のように大切にしてくれている。
今のところ(できればずっとそうであってほしい)，世間一般の「義実家との問題」はない。
「Aちゃん，ごめんなさいね。ご迷惑おかけするかもしれないね」
お義母さんは，私にそう言って頭を下げた。
私は何度も首を横に振った。
「謝らないでください。誰も悪くないんですから。大我と一緒にいられるだけで，幸せなんです」
「Aちゃん…ありがとうね」
どこか切なげに微笑む顔は，大我によく似ていた。
お義父さんが大我に，病気のことを尋ねていた。ご両親と3人の方がいいかな，と，一旦病室を出る。
廊下にいるのも邪魔になると思って，談話室で少し待つことにする。
談話室に設置された自販機で，ミネラルウォーターを買った。
商品出口からペットボトルを取り出し，椅子に腰掛ける。そのとき，談話室に入ってきた(おそらく)入院中の男の子が私を見て「あっ」と小さく声を上げた。
誰なのだろう，と思っていると，彼は少し深呼吸をして話しかけてきた。
「あの，違ったら申し訳ないんですけど……大我先生の？」
その言葉に，一昨日大我が生徒と再会した，と言っていたことを思い出す。
「そうです。…大我の生徒さん，かな？」
「はい。松村北斗と言います」
北斗くんははにかむように笑った。
大我の生徒ということは高校生なのだろうけど，もっと幼く見えた。
担任しているクラスの子達を見ても若いな，と感じることはあるけれど。
その子たちも，制服姿でなければもっと幼く見えるのかもしれない。
「そうだったのね。大我からお話聞いてました。…でも，どうして私のこと分かったの？」
「先生のスケッチブックに描かれていた方に，すごく似ていて」
もしかしたら，と思いました，と北斗くんは続ける。
大我が私の絵を描いていたことは知らなかった。
「先生，今日手術なんですよね？」
「そうそう。もうそろそろ手術室に移動かな」
「先生に，よろしくお伝え下さい」
「うん。ありがとうね，北斗くん」
北斗くんはさっきの笑顔のまま，まっすぐ頷いた。
病室に戻らなくちゃ，と立ち上がる。
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作者名：chapi
| 作成日時：2022年9月5日 0時
