ブルー・モーメント (ページ4)

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side Taiga
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「グラフィックデザインとは，主に平面の上に表示される文字や画像，配色などを使用し，情報やメッセージを伝達する手段として制作されたデザインのこと。……って言っても分かりづらいね。ポスターとか雑誌，新聞広告とか，あとはパッケージのロゴとかね。日本では，第二次世界大戦のあとから本格的にグラフィックデザインが使われるようになりました」

今日は制作じゃなくて座学だからだろうか，うとうとしている子たちも多い。
俺も高校時代そうだったな，なんて思いながら授業を進める。
美術室のホワイトボードに文字を書いていった。

「みんな，ゴシック体と明朝体のレタリングは１年生のときやったよね。文字にはそれぞれ特徴があります。新聞とか雑誌で使われる文字は誰にでも読めるような機械的な字だし，手紙とかサインは個人のクセとか性格が出る。手書き文字には温かみがありますね」

いくつか映画のポスターを例に出して，タイトルロゴと内容の関係について話した。

「じゃあ，今日はグループで好きな映画……なんでもいいよ，アニメ映画でも洋画でも。好きな映画のタイトルロゴのグラフィックデザインと，映画が伝えたいことの関係性について考えてみましょう。タブレットとスマートフォン使っていいからね。グループで1つ映画を選んで，考えたことをワークシートに記入してください。最後の15分でプレゼンしてもらうね」

はーい，と返事する生徒たちにワークシートを配布する。
高校3年生の美術の授業を受けているのは，欠席の松村くんを含めて13人。
今日は4人ずつ3グループに分かれてもらった。

各グループから，いろんな映画のタイトルが聞こえてくる。
タイタニックやローマの休日，といった洋画の名作から，最近公開したアニメーション映画まで。
意外と高校生も色んな作品を見ているのだな，と感心する。

俺も何か考えてみようかと，授業用のパソコンを開く。
そのとき，手が少し痺れていることに気がついた。
昨夜，深夜まで絵を描き続けたせいだろう。腱鞘炎にでもなっちゃったかな，困ったな，と手首を軽く振った。