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side Taiga
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診察室に入った途端，ぐるんと視界が回ってしゃがみ込んでしまった。すぐに看護師さんが支えてくれて，診察室のベッドに横にしてもらう。
クラクラしたまま，先生の質問に答えていく。
具合が悪くてどうにかなりそうなのに，横になったままでも診察できるんだな，と妙に真面目に考えてしまった。
「手の痺れ，ですか？」
「…はい，なんか…数日前から右手に軽い痺れがあって……腱鞘炎なりかけかなって，思ったんですけど…」
「…なるほど。ご職業は？」
「絵本作家，です…」
「…右手の痺れ以外に気になることありますか？」
「…昨日の夜，右脚に…ちょっと違和感があって」
そこまで聞くと，先生は看護師さんを呼んだ。
それから早口で「ご家族呼んできて」と伝える。
……どこか良くないところでも，見つかったのだろうか。
「京本さん，紹介状書いておきます。ご家族は？」
「…妻です」
「奥様ね。…脳神経内科に行ってください，このまま。もし異常がなかったら，耳鼻科に行ってね」
脳神経内科。
偏頭痛で何度かお世話になったことはあるけれど，なんとなくそんな感じじゃない気がする。
Aに迷惑かけちゃうな，と思って申し訳なさが募った。
少し経って，緊張した表情で診察室に入ってきたA。先生は彼女を丸椅子に座らせ，さっき俺にしたような説明をした。彼女は不安そうに先生の話を聞いていたが，やがて俺の方を見て，泣きそうな声で尋ねてきた。
「大我，大丈夫？」
大丈夫，とは言えないけれど，安心してほしくて「うん」とだけ答えた。
眩暈が酷そうだから，と看護師さんが車椅子を用意してくれて，それに乗せられて脳神経内科まで向かう。脳神経内科は大学病院の3階にあった。
紹介状を受付で渡すと，すぐに中に通された。
華奢な印象のお医者さんが待っていて，MRIとCTを撮って血液検査をすることを告げられた。Aは先生の言葉に，泣きそうな顔で頷いた。
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作者名：chapi
| 作成日時：2022年9月5日 0時
