記憶のオクに…【青】 (ページ18)

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ルナが彼女やなんて、今でも信じられへん

ルナは“彼女宣言”した次の日も病室にやってきて、高校時代の話をした

でも、僕が東京に来てからの事を聞くと“お互い忙しくて、なかなか会われへんかった”の一点張りで、らちがあかない

退院前日、ルナが明日の為にと持ってきた洋服

「ええやん。ありがとう」

とは言ったものの、袋の中は

細身のパンツにジャケット、それにハット
う～ん、僕こんな趣味やったっけ？

鏡を見ながら、頭にちょこんとハットをのせてみたものの……やっぱちゃうっ！

右手でそれを取ろうとしたら、鏡にうつる薬指の指輪

この指輪、なんか意味あるんかなぁ？

ルナに聞いても“そんな趣味悪い指輪知らんわ。はよ捨てて”とか言うねん

でも僕気に入ってるし、この指輪外したらあかん気する

思い出せない記憶が壊れてしまいそうで

退院日当日

1週間ぶりに出る外の世界

職場や大学、よく行ってたお店なんかを回ったら、記憶も戻るんちゃうかな？なんて密かに期待しながら、朝食が終わってすぐに着替えた

「やっぱり変…かなぁ？」

鏡で自分の格好を何度も確認しているとノックの音

入ってきた山田さん。僕のこと見て驚いてる

“カッコいい”とは言うてくれたけど、目泳いでるし

その後すぐに来た亮には

「章ちゃん何その格好。全然似合ってないけど」

そこまでハッキリ言わんくても…
僕だってわかってる！

てっきり山田さんも家までついて来てくれるものやと思っていたら、今日は午前中から仕事らしくて

「これね？預かってた携帯とお家の鍵」

家の鍵には真新しい青色のキーケースがついていて

「そのキーケース、私からの退院祝いってことで…」

「ええの？ありがとぉ。大事にする。今度お礼させてな」

「いいよ、そんなの。じゃあまたね」

僕の手に鍵と携帯を置いて行ってしまった

「よしっ、章ちゃん帰ろっか」

亮の車で家に到着

エレベーターに乗ってボタンを押そうとしたら

「章ちゃん、うち3階やなくて5階やで」

無意識のうちに違う階を押そうとしてたり

「章ちゃん、どこ行くん？」

「えっ？手洗おう思って」

「そっち、トイレ。洗面所は左のドア」

トイレと洗面所の場所まで間違えて

はぁ、何やってるんかな？
………てか、僕本当にここに住んでたんかな？

微妙な違和感を感じながら、自分の部屋に入った